結論　★★★★★★★★★☆

「至上のハンドリング性能と万能性を備える、ほぼ完璧な一台だ」

もしも10年近く前の4WDパフォーマンスカーしか知らなければ、このM5のハンドリングは目から鱗だろう。フォード・フォーカスRSやアウディR8、はたまた日産GT-Rに乗った後でさえ、M5のアジリティやバランス、そして遊び心は特筆ものに思えるが、それでいて2t級の4WDスーパーサルーンに予想するであろうトラクションやスタビリティも備えているのだ。いっぽうでダンピングの説得力やボディコントロールは、直接的なライバルを寄せ付けない。

そこまで言いながら、何ゆえに満点ではないのか。それは小さな減点要素がいくつかあったからだ。それはやや退屈なステアリングの手応え、一定でないブレーキペダルのフィール、合成音が混ざるエンジンサウンド、そして時として落ち着かない乗り心地といったもろもろである。

とはいうものの、このM5は万能の走りと、ライバルたちを凌ぐバランスを備え、スーパーサルーンとしては文句なしにカテゴリーのトップに輝くモデルだ。ただし、これまでのMモデルを振り返ると、F10・M5では30周年記念モデルのドライスィヒ・ヤーレ、F82・M4ならCSといった、極め付きのモデルが追加されるのが習いとなっている。となれば、F90・M5にもそれに相当するモデルが登場するはず。それこそ、比類ないスペシャルな一台と呼べるものになるはずだ。

担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダース

高級車につきものの装備を取り揃えながら、スーパーサルーンのカテゴリーで熱いドライバーに支持されるに足るクルマとなっていることは、個人的には驚きだ。

リチャード・レーン

信じがたいほどのパッケージだが、ステアリングには不満がある。275幅のフロントタイヤはすぐに足を取られ、舵の手応えも一貫しない。話は変わるが、コンペティション・パッケージでは640psまでパワーアップするらしいが、どうしたものか。

オプション追加のアドバイス

1100ポンド（17万円）のMスポーツエグゾーストは、サウンドにわずかながらも必要なキャラクターをもたらしてくれる。カーボンセラミック・ブレーキとコンフォート・パッケージは選びたいが、プレミアム・パッケージはパスしたい。

改善してほしいポイント

・ステアリングの改善を。気になる重さを削って、一貫した手応えを持たせてほしい。
・人工添加サウンドを、どうかなくしてもらいたい。
・7495ポンド（112万円）もするカーボンセラミック・ブレーキなのだから、ペダルフィールをそれに見合ったものにしてほしい。

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