「既成品」は嫌? ワンオフ車の世界 唯一無二のクルマに乗る5人
公開 : 2018.09.29 10:10
セアト・アローザ・ドラッグカー
ディーゼルの限界へ ゼロヨンは9.7秒
まずはオーナーのポール・ライナスから手ほどきを受ける。「ギアを2速に入れて、ローンチコントロールをオンにしてエンジン回転を上げて、その右のクラッチリリースでクラッチを繋ぎます。あとはカタパルト発進としかいいようがないですね」
ライナスが操るこのセアト・アローザ・ドラッグカーは、英国のディーゼルエンジンを専門とするチューナー、ダークサイド・ディベロプメンツの製作だ。サンタ・ポッド・レースウェイで記録した0-400m加速は9.7秒。同時に0-97km/hを2.3秒、0-161km/hも4.8秒というにわかに信じがたい記録も達成した。一時は地上最速の前輪駆動ディーゼル車の座に君臨したのだ。
このクルマは、ダークサイド・ディベロプメンツという会社が4気筒ディーゼルエンジンの限界をきわめるためにつくったという。
ありふれた2.0ℓコモンレール・ディーゼルをベースとして、パワーアップのために考えつく限りの手を尽くした。ジョン・ディアのコンバインから拝借したボルグ・ワーナー製ターボなどは4barというとんでもない圧力で空気を送りこむのだが、そのおかげもあって出力とトルクは最高でそれぞれ558psと89.9kg-mを発する。
排気はエンジンからそのままボンネットの上へ引きだされ、ライナスのひと踏みで鼻をつく濃い煙がまるで火山灰のように噴きあがる。