マクラーレン600LT試乗 570Sより100kg軽量化 675LTから3年分の進化
公開 : 2018.10.01 11:10 更新 : 2018.10.01 22:22
ライバルを寄せ付けないコーナリングマシン
コーナーはまさに、600LTの真価の見せ所。自然な挙動で、熱狂させるかのように、エイペックスを縫っていく。ピレリPゼロ・トロフェオRは、まるでレースタイヤのように、表面温度が上がると強力に路面に張り付く。しかし、クルマと格闘するような印象はない。マクラーレンのモデルすべてに共通することながら、ステアリングは軽い。重さの増加はリニアで、それに合わせてスウェードが巻かれたステアリングホイールのフィードバックも増えていく。
乗り心地は明確に硬いが、急な衝撃が加わるようなサーキット脇の縁石に乗り上げても、ダンパーはボディをピタリとコントロールする。しかも、固定式のリアウイングと延長されたディフューザーによって、250km/h時のダウンフォースは100kgも増えている。しかし、マクラーレン・セナのような、際限のない印象とも異なる。スロットルレスポンスは外科用メスのようにシャープ。ピットレーンを助走している時の、低回転域ではエンジンはややもたつく印象があるが、コースに出てしまえば、アクセルペダルは一気に敏感になる。
限界領域であっても、運転が難しくなることはないが、電子制御の効きは殆ど感じられない。といっても、電子制御の存在を隠しているクルマとは異なる。スタビリティコントロールの制御がオンの状態でも、クルマの姿勢を整えるのはドライバーの責任として、最後まで存在している。コーナリングスピードが遅すぎるとアンダーステアを招き、スロットルを開けるのが早過ぎたり急過ぎると、リアが流れ出してしまう。トラクションコントロールは、その挙動を穏やかにしてくれるだけだ。
走りのカギは、カーボンセラミックブレーキを採用していること。ペダルの踏力がシッカリと伝わり、クルマの向きを変えるサポートをしてくれる。クルマはエイペックスめがけて弧を描き、怒涛のパワーを解き放つタイミングを作ってくれる。
発進加速は、675LTの弾かれるような振る舞いではない。ラップタイムを削るというよりも、タイヤスモークを上げたドリフト走行を楽しむような、遊びを持った性格だと感じる。サーキットでは、価格を超えてライバルを寄せ付けない、コーナリングマシンと化す。加えて675LTに引けを取らないエキサイティングさも持っている。きっと一般道でも、夢中になるドライビングを提供してくれるに違いない。