駐車違反で罰金の請求

「（ハイド・パーク北東角の）マーブル・アーチに馬の行列が出ているので、（渋滞を避けるため）左折してサセックス・ガーデンズ通りへ入ってほしい」というお客の申し出をうっかり忘れてしまったほかは、帰り道は行きよりもずっと心穏やかに走れた。

お客は降りぎわに「良い運転だったよ」と声をかけてくれた。「サセックス・ガーデンズは通ってくれなかったけどね」とも。気がゆるんで大笑いしたわたしは、つい馴れ馴れしくお客の腕をポンと突いてしまった。途端にアバスの射るような冷たい視線が飛んできたのはいうまでもない。

そして不幸にも、アバスにはさらに悪い知らせが待ちうけていた。取材の数日後、会社に罰金の請求が舞いこんできたのだ。わたしがお客を降ろすのに特定車両以外駐車禁止の区画に停めてしまったところが、ばっちり証拠写真に撮られていた。

社の規定によれば、罰金は運転手、すなわちわたしが支払うことになっている。だが、なんと寛大かつ紳士的なことに、彼が代わりに払ってくれたのだ。アバス、本当に申しわけない。

一人前の運転手になるための10の心得

・待ち合わせの予定時刻より15分早く着いておくこと。
・お客様にドアを開けてさし上げることを忘れないこと。もちろんレディーファーストで。
・ネクタイは固くきちんと結び、シャツのボタンはすべて留めておくこと。
・髪型やあごひげはきちんと整え、見苦しくないように努めること。
・香水も欠かせないが、強すぎる匂いは禁物。
・お客さまからの求めがあれば握手をして良いが、こちらからは求めないこと。
・話しかけられるまでは、黙っていること。
・運転席に乗りこむときも紳士的に。屋根から落ちるレンガのようにドカッと腰かけない。
・常に先を読んで運転すること。快適にお乗りいただけるよう、急な操作はご法度。
・できるだけ穏やかな発進／停止を心がけること。

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