最高に「ふつう」なクルマは? ファミリーハッチ決定戦 後編

公開 : 2018.10.13 16:10  更新 : 2021.03.05 21:36

運転好きのためのクルマ

だが、それも動力性能が素晴らしいからという訳ではない。われわれのテスト車両は、ややソフトで激しく運転した時にはグリップが不足しており、タウンスピードでのダンピングには優れるものの、時に縦方向のボディの動きが足りなかった。さらに、ゴルフのエンジンには、オクタヴィアに積まれていた時ほどの洗練や特別な感じがなく、高回転ではうるさく、その回転上昇も滑らかさに欠けていた。つまり、少なくとも今回のテスト仕様であれば、ゴルフを選ぶ運転好きはいないだろうということだ。

マツダ3こそが運転好きのためのクルマだった。自然吸気2.0ℓエンジンを積んだこのクルマを、厳しいダイナミックテストで丸1日試してみれば、その実力が理解できるだろう。鋭いスロットルレスポンスと、見事な重みと感触をもつ操作系はフォーカス以上に素晴らしく、その乗り心地はやや落ち着きに欠けるものの、素直なフィールと固めたサスペンションをもつシャシーは、豊富なコーナリンググリップと、フラットなボディコントロール、高い前輪トラクションによって、滑らかに進路を変え、ドライバーに次のコーナーを待ち遠しくさせるのだ。

では、フォーカスはこうしたすべてをマツダ3と同じようにこなし、その挑戦に応えることは出来るのだろうか?


まったく同じではないものの、フォーカス流のやり方で、このクルマはさらなるドライビングの高みを見せてくれる。新たな発見は多くはないかも知れないが、20年前から連綿と続く、どこにでもあるようなファミリーハッチバックとしては最大限の運転する喜びを、フォーカスは味わわせてくれるのだ。

独特の活気溢れる125psを発揮する3気筒エンジンと、バランスに優れ、機敏でドライバーを夢中にさせるハンドリングを抜きにして、フォーカスのドライビングにおける魅力を語ることはできない。フォーカスは常にエンジンかハンドリングのどちらかでライバルたちを凌いできたが、いまやそのふたつを手にしているのだ。そして、ふたつを手に入れたこのクルマはさらなる高みに到達しており、フォーカスの卓越したクオリティを否定することなどできないだろう。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事