最高に「ふつう」なクルマは? ファミリーハッチ決定戦 後編

公開 : 2018.10.13 16:10  更新 : 2021.03.05 21:36

最高の普通 王の帰還

新しい電動パワーステアリングの妙な弾性や、このクルマに溢れる情熱に対してトルクの足りないエコブーストエンジンを理由に、あいまいな態度をとることも可能かも知れない。だが、フォーカスが中速コーナーへとターンインするときのグリップや、アクセルオフでリアを振り出す様子、さらにはそのふたつが合わさった時の輝き、そして路面不整をしなやかにいなしつつ見せる引き締まったボディの動きを見て欲しい。

それでも、フォーカスが他のモデルよりも優れているとは断言できないと言うなら、今回テストしたのはフォーカスで最もスタンダードなグレードにも関わらず、1998年の初代登場以来、最大の余裕を感じさせるモデルだったと言えば納得してもらえるだろうか。

もし、まだ十分でなければ、この4台の動力性能の違いと同じくらい詳細に、インテリア品質やラゲッジスペース、実用性といったものを改めて比較しても良いかも知れない。だが、結局理解すべきはフォーカスの素晴らしさなのだ。ホンダスコダを除けば、フォードよりも実用性で大きく勝るモデルはない。一方で、インテリアの品質や洒落た雰囲気といったものに関しては、フォーカスよりもゴルフや308、もしかしたらオクタヴィアといったモデルの方が優れているかも知れない。だが、それも動力性能の差を埋めるほどの違いではないのだ。


フォーカスは毎日乗るに相応しい慎ましさも残している。オクタヴィアやシードのように安っぽいマテリアルを上手く覆い隠せていないし、ゴルフのように効果的に高級感を醸し出すこともできていない。そのキャビンは単調で飾り気のないものだ。もちろん、アストラのようにパーツの取付けがしっかりとしていない訳ではないが、特筆するレベルに達しているとも言えない。だが、普通であるからこそ、フォーカスは、なぜ運転がこれほど素晴らしいのかとドライバーの注目を集めているのだ。

20年前、初代フォーカスはすべてのライバルを凌ぐハンドリングが絶賛され、英国のハッチバック市場を支配する存在となった。現在、世間の注目はクロスオーバーに向かい、EVと自動運転が話題をさらっているが、この4代目フォーカスも初代と同じように絶賛され、市場を席捲することはできるだろうか。もちろんそれは可能だ。ファミリーハッチバックの王はかつてないほどの素晴らしいモデルとして戻ってきたのだから。

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