アルピーヌA110/アバルト124GT/フォーカスRS WRC第11戦を巡る 前編

公開 : 2018.10.14 06:10  更新 : 2021.05.13 12:00


オールドスクールなアバルト124GT

それと対照的な位置にあるのがアバルト124GT。なんというか、直線の走りっぷりはオールドスクール。でも、グレートオルメのダウンヒルのコーナーを抜けて、WRCのラリーカーがドリフトしながらバックファイアをあげるであろうランナバウトを回ってみると、少し考えを改めた。

アルピーヌA110は、先祖はリアエンジンだったけれど、ミドシップで、ボデイはアルミニウム構造。現代的な設計と素材を用いて、1gでも軽くすることに努めている。フォーカスは、歴史的な繋がりを持たせているとはいえ、素晴らしい4輪駆動システムと電子制御技術が、まるで周囲環境に自身を順応させるカメレオンのように、路面に合わせてクルマを変化させる。いかにも現代的なクルマだと思う。

アバルト124GTはといえば、シンプルなモノコックシャシーに170psたらずの1.4ℓターボエンジンをフロントに搭載した、2シーターのマニュアル。屋根はファブリック製のソフトトップではなく、取り外し可能なハードトップに置き換わっている。このルーフが、124GTをスパイダーとは異なるクルマとしている点。素材は極めて現代的なカーボンファイバー製となる。

でも、このシンプルさがアバルトの魅力を生んでいる。手頃な価格の、コンパクトな後輪駆動のコンバーチブルを欲しいと思わないエンスージャストはいないはず。わたしもそのひとり。グレートオルメの付け根の街、スランディドノの込み入った道で、アバルトの魅力が引き立った。

頭の中の天使と悪魔が語りかけてくる。アクセルを煽って、刺激的なエグゾーストノイズを楽しむかどうか。といっても、懐かしく思えるレコードモンツァ・マフラーの美しい響きに、考えは簡単に傾くのだけれど。つまり、マツダロードスターなら可能な、日曜日の朝に穏やかに走る楽しさは、124GTには備わっていない。アバルトのブランドイメージの通りのクルマ。クルマの成り立ちすべてが、アバルトにはうってつけ。ナスカーのサーキットのような、ダートの競馬場にも丁度いい。

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