メルセデス・ベンツSL65 AMG
公開 : 2013.04.10 13:38 更新 : 2017.05.23 16:39
■どんなクルマ?
これは希望でもあり証明でもある。現代化され、ダウンサイジング化され、簡素化され、そして環境に配慮したクルマだけしか生き延びることができるのではないという証明だ。また、ヨーロッパの厳しい排出ガス規制であっても、スポーツ・モデルを廃することができないことの証明でもある。プラグイン・ハイブリッド・モデルや、軽量化された経済的なクルマが主流になったとしても、異常なモンスター・モデルが生き延びることができるということを示している1台だ。
メルセデス・ベンツSL65 AMG。途方もないV12エンジンにツインターボを装備したエンジンを持つスーパー・スポーツである。それは、2012年に英国市場にもたらされるR231 SLロードスターの中でも最も強力なバージョンだ。
このSL65 AMGは、他のSL AMGのようにクルーザーとしての性格と、パフォーマンス・カーとしての性格を兼ね備えたクルマである。そして530bhpのSL63よりも60,000ポンド(910万円)も高いプライスが付けられている。その理由は簡単だ。そのエンジンには、621bhp、101.9kg-mのパワー、トルクを発揮する6.0ℓV12ツインターボ・ユニットが搭載されているからである。
■どんな感じ?
以前のSL65やSL65ブラック・シリーズよりもその性格はピーキーではない。しかし、パフォーマンスにおいては、それと同等以上のものを持っている。
3バルブのV12ユニットは、不器用な速度であっても恐ろしいほどスムーズでマナーが良い。おたおたしたような速度であっても、SL65 AMGは滑らかに走りきってしまうのだ。
その101.9kg-mという太いトルクが、2300rpmからマックス値を発揮するのも特徴だ。ターボ・エンジンだが低回転でのレスポンスも良く、ハーフ・スロットルであっても何の問題もない。7速のオートマティックと組み合わせられたのは初めてだが、そのレシオもベスト・マッチングだ。
SL65 AMGは、標準でアクティブ・ボディ・コントロール・サスペンションが装備される。これは、スプリングの長さと油圧ダンパーをコントロールして、ボディをフラットに保つほか、乗り心地を独立して調整するというもの。しかし、その乗り心地は、低速ではSL500よりも明らかに突き上げを感じる。と同時に、そのグリップ・レベルとロール・コントロールは、小排気量のSLよりも上である。
実際、英国の2級国道ではそのパワーの70%も使えないというのが現実だろう。
セカンド発進で、アクセラレーター・ペダルに力を込めると、あっという間に3速となる。ターボが効き始めたことを体感できるようになり、4速ギアへ入った時には、スピードは225km/hに達している。そして、5速ギアではリミッターの効く250km/hになってしまうのだ。その速度域まで、いとも簡単にクルマを運ぶことができる。その時点でも、エンジンは野蛮な唸り声を上げることはない。それはアフターヌーン・ティーと同じぐらい静かにデリバリーされる。
■「買い」か?
もしフラッグシップを望むのであればSL65 AMGしかない。しかし、われわれがテストを行った舞台はほとんどがアウトバーンであり、このクルマの本当のパフォーマンスを愉しむには160km/h以上の世界が必要ということも同時に理解しなくては駄目だ。あとは、あなたが、その誘惑と法律の間で、どう考えるかにかかっているとも言えるだろう。
また、このようなハイ・パフォーマンス・モデルを登場させることを許してくれるマーケットが存在することにも感謝すべきだろう。
但し、SLに望む多くが、84,000ポンド(1,270万円)のV8のSL500で充分と感じるのであれば、ショールームに戻ってSL500をオーダーすべきだろう。
(マット・ソーンダース)
メルセデス・ベンツSL65 AMG
価格 | 168,250ポンド(2,550万円) |
最高速度 | 250km/h |
0-100km/h加速 | 4.0秒 |
燃費 | 8.6km/ℓ |
CO2排出量 | 270g/km |
乾燥重量 | 1950kg |
エンジン | V型12気筒5980ccツインターボ |
最高出力 | 621bhp/4800rpm |
最大トルク | 101.9kg-m/2300-4300rpm |
ギアボックス | 7速オートマティック |