ホットハッチ三つ巴対決 フォーカスRSに挑むシロッコR 後編 回顧録
公開 : 2018.10.25 18:10
やや洗練に欠けるZ
比較的のんびりと60〜70km/hくらいで走っていても、Zはライバルたちに比べてうるさく落ち着きがない。確かにエンジンは始動時にも、そして走り出しても響き渡るV6特有の魅力的なサウンドは、それだけで湧き上がる活力を感じさせるし、音質自体も頼もしい。
その一方でエンジンそのもののフィールは粗野であり、決して心酔できるほどの気持ちよさは持ち合わせていないのである。スムーズにして驚くほど能力の高いフォーカスRSや、洗練度ではさらに上を行くシロッコRに比べると、Zのエンジンとトランスミッションは無骨であると言わざるを得ない。
それでも強烈な動力性能で前輪駆動勢を完膚無きまでに叩きのめしてくれたなら、Zにそんな部分も許容できたかもしれない。だが、残念ながらそうではなかった。Zのエンジンが回転数を十分に上げる前に、ターボを装備した2台はたっぷりとしたトルクとフレキシビリティで逃げ切ってしまうのだ。
それも瞬殺に近い。そのたくましいサウンドからは想像しがたいが、Zでこの2台と走る場合には、よほど神経を集中させていなければ一瞬のうちに、下手をすればコーナーに進入する前に置いて行かれかねない。