グンペルトRGナタリー・フューエルセルEV ついにニュルで同乗試乗
公開 : 2018.10.25 06:10
RGナタリーの詳細スペック
極東生まれの電動スーパーカーはほかにもあるが、RGナタリーはそれらに比べだいぶ妥当な内容だ。というのも、アイウェイズは数百台規模での生産を計画し、価格は40万ユーロ(約5200万円)程度と見込んでいるからだ。そして、そのパワートレーンもクレバーなものである。
動力は4基のボッシュ製モーターを採用。これは、前後アクスルに2基ずつ搭載される。1基あたりの性能は139ps/23.5kg-mで、システム出力は約430ps。総トルクは未発表ながら、0-100km/h=2.5秒という加速性能からは相当な大トルクが期待される。
ギアボックスは2段で、160km/h程度で加速用ローギアから高速用ハイギアに切り替わる。最高速度は306km/hに到達するというが、まだ実測されてはいない。こうした数字は、電動ハイパーカーならば驚くほどのものではないが、RGナタリーはもうひとつ、秘策を隠している。
そう、このクルマのボンネットの下には、燃料電池が積まれているのだ。しかも、その燃料は大多数を占める水素ではない。オランダのセレナジー社が開発したこれは、水とアルコール、より正確にはメタノールとの混合液を使用する点が特色となっている。
高温プロトン交換膜を用いるそれは、メタノールから触媒反応により水素を取り出す。しばしば過剰な水素が結果的に浪費されるが、エネルギーを触媒反応の維持に用いるため、結局のところ一般的な燃料電池より発電効率が高くなる。
純水素に対し、メタノールを使うメリットも多い。まず、貯蔵がはるかに楽だが、これは揮発性が低いからで、同時にインフラ整備も容易に進められる。タンクはもちろんだが、燃料電池内の圧力が下げられるのも利点だ。ただし、出力は水素燃料電池より低く、CO2を生成してしまう欠点もある。エンジニアの試算によれば、メタノールが化石燃料由来だった場合、RGナタリーのCO2排出量はだいたい30g/kmに相当するという。
プロトタイプに積まれた燃料電池の出力は5kWhにとどまるが、通常の使い方をする限りは十分だ。というのは、クルマをオフにしても、燃料電池は駆動用バッテリーを満充電するまで作動し続けるから。ただし、長距離移動ではプラグイン充電に頼らざるを得ない場合もある。メーカー公称の航続距離は、80km/h走行でおよそ850kmというが、このクルマのパフォーマンスをフルに使えば、それなりに数字が落ちるだろうことは想像に難くない。