グンペルトRGナタリー・フューエルセルEV ついにニュルで同乗試乗

公開 : 2018.10.25 06:10

いよいよ初の同乗走行

当初の予定では、ノルドシュライフェでの全開アタックに同乗できるという話だったが、残念ながらそれは実現しなかった。なにしろその朝は、世界最長のサーキットで、1ダースものジャーナリストが順番待ちの列をなしていたのだから、バッテリー消費の見通しが甘かったというしかない。結局、われわれが助手席に乗り込むころには、距離もペースも制限せざるを得なくなっていた。そうではあったが、量産モデルの姿を多少なりとも予感させる材料を得るには十分だったといえる。

快適な革張りのスポーツシートに滑り込むと、室内はこの手のクルマとしては驚くほど広く、振り返ると小さいながら2座のリアシートまで備わっていた。ラゲッジスペースも大きいが、そこにはロールケージが組まれていた。また、後席のフットウェルがあるべき場所は、バッテリーパックとパワートレイン、と思しきものに侵食されている。

仕上がりが完璧とは言えないものの、それでも実に居心地のいい空間だ。目の前には3つのディスプレイがあった。ひとつはステアリングホイールの向こう側でメーターパネルとして働き、センターコンソールの下端にはエアコンの設定を表示する小さい画面、ダッシュボード上部にはドライバーの視線上にさまざまな情報を投影する大きなモニターが備わる。

センターコンソールからはトグルスイッチが4つ突き出しているが、これがギアのセレクター。Dボタンを押すと、かなり大きな金属音と共にドライブラインが接続される。もっともこれは開発途上の車両で、来年いっぱいは市販に漕ぎつけないだろうモデルだ。今後、改善されるに違いない。

発進時、モーターはそれなりに大きな唸りをあげるが、まさしく電気自動車のフィールに他ならない。実に元気よく飛び出すが、ドライバーによればそれでもハーフスロットルにさえ達していないという。最高速度は110km/h程度だったが、このクルマがしっかり機能していることを知るには十分だった。

パワートレーン以上に素晴らしかったのが、四輪駆動システムだ。トルクベクタリング機構があまりにも強力な横グリップを維持するので、これは限界を試すどころでなく、はるか手前で怖じ気づくのではないかと不安になったほどだ。

ごく初期のプロトタイプ、その助手席に短時間乗っただけで、しかもバッテリー残量に気を使ってのスロー走行である。テスト走行のインターバルはたった2分で、燃料電池がバッテリーに送り込める電力は、2kmも走れない程度。1周したら、あとは燃料電池が絞り出すわずかな電力でどうにかピットへ戻らなければならない。そうなると、上り坂では50km/h程度、平坦路なら65〜80km/hくらいは出せるといったところだ。

これほど短時間の同乗走行では、結論を出すのは難しい。明らかなのは、まだまだ改善の余地は大きいということだ。燃料電池の出力に関しては、エンジニアが10kWhのセルを開発中だというので、それに期待しよう。また、車両価格を考えれば、内外装ともにクオリティの引き上げが必要だ。とはいえ、まだまだ発揮されていないかなりのポテンシャルがあることは確かで、来年にもこれの完成形に出会えることに期待したい。

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