マクラーレン600LT 欧州縦断2200kmのドライブ ブダペスト〜ロンドン
公開 : 2018.11.04 16:10
恐ろしいほどの速さ
ヘアピンカーブを何度曲がっても兄弟車と区別がつかないほどフィーリングは似ている。しかし、われわれふたりと機材一式を積み込み、Pゼロ・タイヤを履いたこの600LTは、本来はもっと軽くグリップも良いクルマなのだ。われわれはまだ本当のロングテールを経験していない。
そこでわたしはオルガンと機材一式を道端におろし、一人で運転してみた。そうしてタイトコーナーを攻めてみても、わたしにはシャシーの特別な違いは分からなかった。しかし、一方が急な岸壁に囲まれ、他方が急激な崖になっている穏やかに曲がりくねった道では、明らかにレスポンスが良く、ステアリングもより正確だ。違いといえばその程度である。やはり容赦ないほど爆発的で恐ろしいほど速い。
グロスグロックナーの頂上に着いたので、そこで引き返して途中でオルガンと機材一式を拾い上げる。ミュンヘン郊外のホテルまでは3時間ほどのドライブのはずだが、そうはいかなかった。周りは丘に囲まれ、太陽は左に沈み、目の前の空は不気味に暗い。
木の葉が道の上を舞い、フロントガラスには雨が落ちてくる。すでに夜となり雨が強くなってきた。白い閃光が周囲を明るく照らす。嵐の中を進み続けると、白い閃光は空を二分する稲妻へと姿を変える。雨は一層激しくなり、マクラーレンのワイパーでは追い付かない。