セアト・レオンSC FR 1.8TSI

公開 : 2013.04.12 17:06  更新 : 2017.05.29 18:44

■どんなクルマ?

セアトレオンSCのファイナル・プロダクション・バージョンだ。このレオンSCは、3ドア・ボディを持ち、FRスポーツ・トリムを備え、1.8ℓのTSIガソリン・ターボ・エンジンを搭載し、7速のデュアル・クラッチを持つモデルだ。

従来の5ドア・モデルとフロント・エンドは共有するが、Aピラーから後ろは完全な再設計で、本当のSC(スポーツ・クーペ)であるとセアトは主張する。特に、急傾斜したリア・ガラスや、低いルーフライン、そして独特のテールゲートなどは5ドアと趣を異にする。また、リアのブリスター・フェンダーも5ドアよりも大きくされている。

その変化はスタイリングだけではない。ホイールベースは35mm短くされた。しかし、リアのレッグ・スペースは過度に減らされてはいない。大人4人のためのスペースは確保されている。また、ブート・スペースは5ドアと同じ380ℓが確保されている。

今回試乗したFRスポーツ・トリムには、専用のフロントおよびリア・バンパー、17インチ・アロイホイール、リアLEDライト、リア・プライバシー・ガラス、赤いステッチの入ったインテリア、そしてフラットボトムのスポーツ・ステアリング・ホイールなどが装備されている。

■どんな感じ?

SCに搭載されるエンジンの中でも最も強力なフォルクスワーゲン・グループの1.8ℓTSIユニットを搭載する。ダイレクト・インジェクションとターボチャージャーを備え、そのパワーは178bhp、トルクは25.4kg-mだ。

最新の4気筒ターボチャージャー・ユニットは、満足なサウンドを立てるが、そのレベルは控えめで、アイドリングでぶつぶつというようなものではない。高回転まで回すと、さすがに張り詰めたような緊張したサウンドと変化するが、エンジン自体がミッド・レンジでのパワーがあることと、DSGのギアレシオの設定が良いので、高回転を使うようなことは滅多にない。

高速道路における巡行も滑らかで静かだ。7速のDSGも素早く反応してくれるため、ドライバーの疲労は最小限に抑えられる。もちろん、一般道ではパドルシフトを駆使してマニュアル風にギアをコントロールすることも可能だ。そして、そのシフトタイミングはストレスを感じさせるものではない。

1.8ℓTSIエンジンを搭載するSC FRは、フロントがマクファーソン・ストラット、リアがマルチリンクというサスペンションを持つ。但し、SCであってもローパワーなモデルは、リアがトーション・ビームになる。15mm車高が低くなり、20%固められたセッティングだが、17インチと比較的小さいホイールとの組み合わせもあって、その乗り心地は非常に良い。また、スポーツ・ドライビングでも、ダンピングが良く効き、最小限のロールでコーナーを抜けていく。

エレクトロメカニカル・ステアリングのフィーリングもダイレクトで正確だ。このステアリング、低速では驚くほど軽いが、決して不快なものではない。そして、速度が増すにつれ、重さは適度なものへと変化していく。コーナリング時には、もう少しフィードバックがありコントローラブルだと嬉しいが、それでもグリップとトラクションは良い。また、トラスバース・ディファレンシャル・ロックが、コーナリング能力を向上させているのも事実だ。

キャビンは視認性の高い計器類と、シンプルなコントロールで扱い易い。タイトなスポーツ・シートは、コーナリング時のホールドも良いばかりでなく、長距離ドライブでも快適さを与えてくれる。また、その室内に入ってくるロード・ノイズとウインド・ノイズも小さなものだ。

3ドアのボディ・シェルは5ドアよりも高く、良質な感じがする。3ドアであることから心配されるリア・シートへのアクセスも悪くない。

FRトリムは決して高い価格ではないが、その割に装備は豪華だ。標準として、5インチのタッチ・スクリーン・メディア・システム、LEDテールランプ、デュアル・ゾーン・エアコン、フロントとリアのパーキング・センサー、電動折り畳み式ドア・ミラー、パワー・ウインドー、ブルートゥース・コネクティビティ、クルーズ・コントロール、ヒル・ホールド・アシスト、ステアリングに付けられたオーディオと電話のコントロールなどが付く。また、従来通りの機械式のパーキング・ブレーキも嬉しい装備だ。

FRトリムは、セアト・ドライブ・プロフィット・システムも装備される。これは、ステアリング、スロットル、周囲の照明、そしてエグゾースト・ノートをボタンひとつで変化させるもの。モードはコンフォート、スポーツ、エコ、独立の4つが用意される。また、DSGモデルでは、そのシフト・タイミングも変化させる。確かに、若干の変化は見られるが、おそらくこのSC FRでは、多くのドライバーがスポーツ・モードを選んだままにするに違いない。

■「買い」か?

コストの掛からないスタイリッシュで洗練されたハッチバックを望むのであれば、レオンSC FRはそのリストのトップに入れられるべきクルマだ。5ドアよりも300ポンド(4.6万円)高く、1.8ℓのTSI FRは21,535ポンド(329万円)という価格だが、そのコスト・パフォーマンスは高い。もし、最も魅力的なSC FRを選ぶとすれば6速のマニュアル・バージョンが最高かもしれない。パンチの効いた小さなハッチバックを操る楽しみを得られるだけでなく、1,250ポンド(19万円)も節約できるのだ。

安いモデルを選ぶとすれば、FRの1.4ℓTSIガソリン・バージョンも良いだろう。または、24.4km/ℓという燃費を持つ2.0ℓのディーゼル・モデルもおすすめだ。

(ニック・カケット)

セアト・レオンSC FR 1.8TSI

価格 21,535ポンド(329万円)
最高速度 224km/h
0-100km/h加速 7.2秒
燃費 16.6km/ℓ
CO2排出量 132g/km
乾燥重量 1307kg
エンジン 直列4気筒1798ccターボ
最高出力 178bhp/4000-6200rpm
最大トルク 25.4kg-m/1500-3900rpm
ギアボックス 7速デュアル・クラッチ

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