アストン・マーティンV8ヴァンテージ
公開 : 2012.03.21 16:31 更新 : 2017.05.29 18:21
■どんなクルマ?
ウルリッヒ・ベッツと彼のチームが会社を買収する以前のアストン・マーティン暗黒の時代から存在していたヴァンテージだが、リファインされたヴァンテージの存在は明るい未来を感じさせるものであった。
価値のあるそして歓迎されるべきアップグレードが行われたとはいうものの、しかし、親愛なるヴァンテージは厳しい競争にさらされることになる。既に第6世代のポルシェ911は耳をつんざくばかりの喝采をもって迎えられているし、新しいアウディR8とBMW M6も、次のコーナーに控えている。ヴァンテージはその後塵を拝すことになるのだろうか。
今年で10歳を数えるヴァンテージの生命は非常に危ういものだ。その基本プラットフォームは、2002年のVHストラクチャーのままで、最近の変更は軽いスタイルの変更にとどまっていたに過ぎない。
そこで、ヴァンテージSに採用されたより大きなホイールとブレーキがヴァンテージにも与えられるようになった。また、ステアリング・ラックも、ヴァンテージSの、よりシャープなレスポンスを持つものが採用された。更に現代の顧客を説得するために、7速のスポーツシフトIIが、5,000ポンド(66万円)のオプションで設定された。
■どんな感じ?
肝心なのは、この新しいヴァンテージが、どのぐらいシャープな感じに仕上がっているかということだ。
実際、新しいステアリングは正確且つダイナミックで、どんなライバルと比較しても劣らぬサクサクとした反応を示す。シャシーもチューニングされた420bhpの4.7リッターV8エンジンをデリバリーするに全く問題のない仕上がりだ。
デュアル・クラッチの出現によりいささか旧式となってしまったマニュアル・ギア・シフトであるが、われわれがテストしたマニュアルシフトの中でも特筆すべきぐらい、クリーンで正確なシフトが可能だった。それがある意味ヴァンテージのキャラクターでもあるのだろう。
エンジニアリングはもちろん現代的であることは間違いないのだが、レトロ感に訴えかけるような何かがヴァンテージにあるということも間違いない。そして、それがライバルに対する強みでもあるのだろう。
インテリア・トリムは、英国紳士クラブを感じさせる感触と匂いが保たれてはいるものの、計器類は人間工学的に設計されていないのが欠点だった。
乗り心地は悪い。硬派なスポーツカーであるにしても、スタンダードなサスペンションをこれほどもまでに固くするのは、アストン・マーティンにも賢い選択ではないといえよう。オプションで更に固いスポーツ・サスペンションが選べるののだから。とはいうものの、ハンドリングのレベルは、アストン・マーティンのオーナーが10年前には想像もできなかった最新のスポーツモデル並のフィーリングが得られている。
■「買い」か?
リファインされたヴァンテージは、確かに欠点はあるものの、非常に魅力のあるクルマだ。この市場での競争が激化すればするほど、その限られた魅力が光ることになるのかもしれない。
(スティーブ・サトクリフ)
アストン・マーティンV8ヴァンテージ
価格 | 84,995ポンド(1,130万円) |
最高速度 | 290km/h |
0-100km/h加速 | 4.9秒 |
燃費 | 7.2km/l |
Co2排出量 | 321g/km |
乾燥重量 | 1630kg |
エンジン | V8 4725cc |
最高出力 | 420bhp/7300rpm |
最大トルク | 47.8kg-m/5000rpm |
ギアボックス | 6速マニュアル |