ロードテスト アウディA6アバント ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2018.12.02 10:10 更新 : 2018.12.06 16:36
乗り味 ★★★★★★★☆☆☆
A6アバントのスムーズな走りは、写真から伝わるだろうか。重い荷物を積んだ長距離でも操縦性を損なうことなく、運転を楽しみながら走ることができる資質を備えている。
現代の上級クラスのクルマでは一般的になっているが、A6のドライビングも、購入する際の設定で微妙に異なってくる。サスペンションには4種類の組み合わせが可能なだけでなく、今回の前輪駆動の他に、2種類の四輪駆動「クワトロ」の選択肢があり、2種類のステアリングアシストの設定が選べる。また一部のモデルでは、電子制御のリミテッドスリップデフも装備が可能となる。
今回の試乗車は、A6のグレードでは中間の位置づけ。アダプティブダンパーとスチールコイルのサスペンションの組み合わせに、前輪駆動では標準装備の可変レシオとなるプログレッシブ・ステアリングが装備されている。
高速道路や一般道、市街地などでの振る舞いを見ると、過去のアウディのモデルの長所を丁寧に引き出しているように感じられる。ダイナミクス性能に関しては、目を見開くような驚きや、思わず笑みを浮かべてしまうような、強い特徴があるわけではない。これは古くからアウディの大型モデルに共通する部分でもある。
ステアリングに伝わるタイヤからの情報は薄く、重さは速度を問わず一定。接地感は人工的な部分があり、好みではないひともいるだろうし、気を使わない淡白なフィーリングを気に入るひともいるだろう。しかし、ハイペースで飛ばしていても、フロントタイヤがどれだけ厳しい状況に置かれているのか、コミュニケーションに乏しいことには間違いない。
そんな性格だから、思わず無意識に運転してしまう傾向もある。フロントタイヤのグリップ力が想像よりも限界に近かったり、あるいは想像以上にグリップやボディコントロールに余裕が残っていたりすることもあるだろう。
アダプティブダンパーを備えた乗り心地は柔軟性に優れ、コンフォートモードでは、古風な長い波長の揺れを残すこともなく、リラックスした空間を生み出す。ダイナミックモードにすれば、操縦性を高めるためにサスペンションは引き締まり、特に中心付近でステアリングのレスポンスが向上。高速走行時でも不足のないグリップ力と安定性を引き出してくれる。
ただしダイナミックモードでも、決してA6のドライビングフィールは濃密になるわけではない。あくまでもリラックスして走らせるクルマなのだ。