ジャガーF-タイプ V8S
公開 : 2013.04.18 20:02 更新 : 2017.05.29 18:38
■どんなクルマ?
ジャガーF-タイプの最も速く最もパワフルで最も高価なモデルがV8Sである。その価格は79,950ポンド(1,192万円)と、途方もなく高価な上に、その下位モデルと外観上はほぼ同じように見える。しかし、その実は間違いなく典型的なホットロッドなのである。
他のF-タイプと同様に、リア・ホイール・ドライブのアルミシャシーを持ち、前後ダブル・ウィッシュボーン・サスペンションを備え、まったく同じ設計のキャビンを持つ。フードも12秒でアップ・ダウンできることも変わりないし、おなじドライビング・ポジションだし、ブート・スペースも200ℓと変わりない。フラットボトムでアルカンタラの巻かれたマルチ・ファンクションのステアリング・ホイールも同一だ。
しかし、以上でV6やV6Sとの類似点は終わりだ。
489bhp、63.7kg-mのパワーを発揮するV8エンジンと、8速のクイックシフト・ギアボックスが組み合わせられるパワートレーンは、V6とはまったく異なるフィーリングをもたらす。V6Sにはメカニカル・リミテッド・スリップ・デフが装備されるが、このV8Sではそれが電子制御になっているのも、そのありあまるパワーを制御するために他ならない。
また、より大きなブレーキや、20インチ・ホイール、クワッド・エグゾースト・システムなどが装備されるのに加え、ステリングの重さ、スロットル・レスポンス、ギアチェンジ・スピード、エグゾースト・ノートを変更できるダイナミック・ドライブ・システムも与えられている。これは、V8Sにまったく異なったパーソナリティを与えるための装備なのだ。
■どんな感じ?
自らを落ち着かせてV8Sのステアリングを握る。V6から乗り換えたとすれば、そのステップアップは確実に体感できるものだ。まずそのサウンドがまったく異なるし、パワー・ステアリングのレスポンスもしっかりとした手応えがある。
スロットル・ペダルに置いた右足に力を込めると、ホットロッドのように微かにボディが震えるのがわかる。それは、真っ直ぐな道で、ロー・ギアを選んだ時に起こる現象だ。その容赦のない加速は、多少恐怖すら覚えるほどだ。
本当のエンスージァストにとっては、このV8Sが唯一のF-タイプになるのかもしれない。0-160km/hを8.9秒で駆け抜ける実力の持ち主なのだ。1速から5速までの加速はあくまで均一で、スロットルを踏み込むと共にぐいぐいと水平線の彼方に飛んでいくような気すら起こさせる。
5.0ℓV8エンジンのレスポンスはファンタスティックの一言。もし、このエンジンがスーパーチャージャーによる過給をしていると知らされていないのであれば、そう信じてしまうほどタイムラグなど微塵も感じさせない。どんな回転からであろうと、肝臓に襲いかかるような暴力的ともいえる加速は、V8Sをとても誘惑的に見せる。ただ単純に速いV6モデルとはその感覚が異なるものだ。
Eデフ・スイッチをノーマルにしておけば、最適なギアを選んで充分なトラクションを発揮してくれるし、スイッチをオフにすれば大きなテール・スライドを意図的にさせることも容易だ。
サウンドは壮大だ。2000rpm以下では深くゴロゴロとした音だが、2000rpmから4500rpmの間では悪魔の囁きを奏で、そして5000rpmからレブ・リミットまでは非常に大きな雄叫びを上げる。それはドライバーのアドレナリンを上昇させるに充分なものだ。
賛辞という意味で、このV8SはかつてのTVRを思い起こさせるクルマであった。
■「買い」か?
余裕があるのであれば、もちろん答えはイエスだ。速くて大きくて高価なジャガーF-タイプV8Sが万人に受けるクルマだとは思えないが、その暴力的とも言えるパワーを望む人にとっては、如何なる価格でのクルマであっても、V8Sとの比較対象にはならないはずだ。
(スティーブ・サトクリフ)
ジャガーF-タイプ V8S
価格 | 79,950ポンド(1,192万円) |
最高速度 | 300km/h |
0-100km/h加速 | 4.3秒 |
燃費 | 9.0km/ℓ |
CO2排出量 | 259g/km |
乾燥重量 | 1665kg |
エンジン | V型8気筒5000ccスーパーチャージャー |
最高出力 | 489bhp/6500rpm |
最大トルク | 63.7kg-m/2500-5500rpm |
ギアボックス | 8速オートマティック |