魅惑のツインエンジンカー ビンテージレーサーから最新ハイブリッドまで 後編
公開 : 2018.11.25 06:10 更新 : 2019.05.04 13:03
フォルクスワーゲン・シロッコ(1984年)
フォルクスワーゲンの2代目シロッコは、ゴルフGTIをベースとした手ごろで人気のクーペモデルだったが、フォルクスワーゲンにはさらなる野望があった。それぞれ183psを発揮する2基の1.8ℓエンジンを、1980年代風のブリスターフェンダーを持つより力強さを増したボディに詰め込んだのだ。こうして出来上がったのが、同時代のアウディ・クワトロスポーツを凌ぐ0-97km/h加速4.1秒、最高速180mphを誇るシロッコだった。
フォルクスワーゲンではこのクルマの宣伝活動を積極的に展開し、新聞広告まで出してツインエンジンのシロッコ購入を考えるドライバーをやきもきさせた。その価格が明かされることはなかったが、フォルクスワーゲンは「光が交錯し、ポルシェのドライバーは激しくアクセルを踏み込むが、その男の顔はバックミラーにしか映らない。そしてその顔には、おそらく驚愕の表情を浮かべていることだろう」と書いた新聞広告でポルシェを挑発していた。残念ながら、このシロッコが生産されることはなかったが、フォルクスワーゲンは同じ方法で創り出したツインエンジンのゴルフを1987年のパイクス・ピーク・ヒルクライムに出場させており、ゴールからわずか200mの地点でグリスニップルにクラックが生じなければ、勝利を収めていたことだろう。