マツダMX-5 英霊記念レースに参戦してみた 退役軍人たちの走りは
公開 : 2018.12.02 18:40
命をかけてひとびとを守り、負傷した男たちがこのレースによって救われたといいます。ほかに類を見ない、退役軍人によるレースに英国編集部のアンドリュー・フランケルがマツダMX-5カップカーで参加し、その様子を垣間見てきました。
もくじ
ー 退役軍人たちのレース
ー 軍による慈善事業
ー 鎮魂の意味も
ー コースに合わないタイヤ
ー マシントラブル
ー 別のマシンでレース復帰
退役軍人たちのレース
「レースがわたしを救ってくれたのは、まちがいないですね」いささか大げさにきこえる話かもしれない。だが、片方の脚を失い、もう片方だって見るも無惨な怪我と50回をこえる手術の痕だらけとなった米国海兵隊員の口から出た言葉となれば、信じてもらえるだろう。彼の名はリアム・ドワイアーという。
彼はいまふたりの元軍人とともに、風雨うず巻くアングルシー・サーキットでマツダMX-5(ロードスター)グローバル・カップカーを駆り、英霊記念レースという12時間耐久レースを闘っている。みんな、アフガニスタンでの任務中に即製爆弾の爆発に遭ってしまい、ありがたくもない名誉の負傷をこうむってしまった男たちだ。
ひとりは英国のパラシュート部隊員だったアンディ・ジョーンズ。彼はたまたま即製爆弾の近くにいたが、まったく幸運なことに脚は無事だった。爆弾の破片が貫通こそしたが、高温だったために通り道の組織が焼け、さらに太い血管を外れていたのも幸いだった。
だが、太ももに排気管が刺さったような感じだったことはいまでも忘れられないという。「キズの手当てに、手あたり次第に詰め物をされましたよ」と語る調子はにべもない。
そしてもうひとりがポール・バイス。みんながバイシーとよぶ彼の話を聞いたら、だれだって映画にしたくなるにちがいない。
戦功十字章を授かることになった、即製爆弾を踏んで受けたいちばんの痛手は、彼の場合脚ではなかった。もっとも脚もずたずたになってのちに切断の憂き目となるのだが、それよりも頚動脈が9割方切れてしまった首の怪我のほうが問題だった。