マツダMX-5 英霊記念レースに参戦してみた 退役軍人たちの走りは
公開 : 2018.12.02 18:40
鎮魂の意味も
今年出場するのは、米国・カナダで同様の事業をおこなうオペレーション・モータースポーツ主催のレースで(米国人のリアムがいるのもそのためだ)、パドックは両団体の受給者、すなわち退役軍人でうまっている。ドライバーのほかにも、給油・タイヤ交換・整備におおくのひとびとが関わっている。
ミッション・モータースポーツは発足してわずか6年にすぎないが、1300人近くの受給者に計4000日以上におよぶ訓練をおこない、100以上の職業と200以上の事業所を斡旋してきた。ここもまた退役軍人によって、憐憫と決意と慈愛、そしてなによりおふざけいっぱいの精神で運営されている。逃げだす者などいないし、大西洋をはさんだ両海兵隊員のあいだでおふざけが始まっても、はたで見ていればいい。
レース前夜の懇親会でのこと。われわれ4人が壇上にあがるなり、バイシーは450人以上の出席者の前でやおらリアムのズボンの裾をまくり上げて朽ち木のような痛々しい脚をむき出しにし、「これが脚だって!?」とぶち上げた。リアムも負けじと「紙で切った傷しかないヤツがよくいうよ」とみごとに切り返したのだった。
レースは土曜日に夜までつづいたあと日曜の朝に再開され、午前11時にいったんピットで一斉に鎮魂の黙祷をささげたあと、午後に終了となる。ミッション・モータースポーツを統括するジム・キャメロン少佐はこのプログラムについて「前後に自動車レースを組みあわせた鎮魂の儀式」と表現するが、たしかにそのとおりだ。
みんなが静かに目を閉じて頭を垂れたとき、そう、まさに第1次世界大戦がおわったきっかり100年後となるこのときが、わたしが人生でいちばん感動した瞬間だった。