マツダMX-5 英霊記念レースに参戦してみた 退役軍人たちの走りは
公開 : 2018.12.02 18:40
マシントラブル
だが1時間と少しがすぎ、特に変わったこともなくわたしの番がまわってきた。わたしも日が傾いて真っ暗になるまで90分のあいだ、ちゃんとしたタイヤさえあればとうらめしく思いながらコースをずるずるとすべり回った。
これでは、MX-5は檻にとじこめられたようなものだ。本来の力を解き放つことができたなら、みんな目をまるくして驚くはずなのに。ロールバーがついただけのただのクルマなんかじゃなく、これはりっぱに鍛え上げられたレースマシンだ。
そしてバトンをうけたアンディもおなじく無難にこなしてリアムへ。ところが彼の予定の半分がすぎたあたりでプロペラシャフトが壊れてしまった。もうスペアは使い果たしていたし、しかも部品自体がサデブのトランスミッションにつなぐ特注の試作品だったから、もうお手上げだ。われわれの12時間レースは、5時間もたたないうちに終わってしまった。そしてそんな状況に陥ったドライバーがきまってするように、4人でバーへ引き上げた。
じぶんの番でマシンが壊れてしまって気の毒なくらい気を落とすリアムに、アンディとバイシーは気持ちをほぐそうとかつてなくキツい冗談をこれでもかと浴びせかける。なんと非情な、傷口に塩をぬりこむようなことをと思われそうだが、それは的外れだ。これが戦争に慣れっこの軍人が互いを元気づけるやり方、彼らにとって何よりのクスリなのだ。気づけば、リアムも負けじとやり返しているではないか。