AUTOCARロードテスト90周年(3) テスター出身者が回顧 クリス・ハリスも
公開 : 2018.12.15 17:10
デビッド・ヴィヴィアン
名前は思い出せないが、ふたりの新しもの好きが、英国で販売しようとドイツまで巨大な水陸両用車両を買いに行った。
納車後、自走で帰ることにしたふたりは、英国海峡でも歩みを止めることなく、34kmにわたってフェリーや貨物船を除けながら進んだのだ。ワイト島への旅に誘われたら断る理由などなかった。
ポーツマスの歩道に乗り上げるところから始まり、ビーチで驚愕の表情を浮かべるひとびとのなか、這うように海へと向かった1日は、とても現実のものとは思えなかった。
だが、ドライバーが開け放ったサンルーフから足をぶらぶらさせ、替わりに推力を得るためのブロックがアクセルに載せられているのを知った時は、排水ランプの警告灯が激しく点滅しているのを見た時ほどの不安を感じた。
有名なヨットレースに闖入しそうになりはしたものの、ライドの街まで辿り着くことができ、潮が引いたところで英国本土へと戻ったのだが、ソレントの砂州でとうとうスタックしてしまった。
そこでわたしはドアを開けると、靴を脱いで、15cmほどの深さの海をそのまま歩いて、一番近くにあるパブへと向かったのだった。
サイモン・ハックナル
ロードテストの計測を行うため、AUTOCARでは英国のふたつのテストコースのどちらかを利用しているのには理由がある。
どちらにも少なくとも1.6km以上のストレートセクションが用意されており、ゼロ発進加速を含め、テスターたちは安心して加速力を試すことができるのだ。
だが2002年、当時最新のマセラティ4200のテストをしなければならなかったその日、どちらのコースも使えなかったので、替わりにロングクロスへと向かったのだ。
ロングクロスのテストコースには1.6kmにも及ぶ直線はなく、唯一存在するストレートセクションは辛うじて1kmに届く程度で、その終わりにはバンク付きの180度カーブが控えていた。行き過ぎれば、待っているのはM3号線だ。
クリス・ハリスによれば、406ps近くを発揮するマセラティであれば、1000m加速を24秒以下でこなすことも可能だという。201km/hの時点では目標より2秒遅れであり、209km/hでコーナーに備えてあまりにも強くブレーキを踏んだために、ほとんどスピンしそうになったものの、最終的に212.4km/hで1000mに到達し、その記録は24.7秒だった。
コースのマーシャルからは「無謀運転」の烙印を押され、その日のテストを切り上げるしかなかった。ミスター・ハリス、もう少しだったんだ。