AUTOCARロードテスト90周年(4) ロータリーやEV テクノロジーの変遷
公開 : 2018.12.16 10:10
ロードテスト90年の歴史のなかで登場したさまざまな技術を振り返ります。時にマーケティングツールとしても活用される新技術ですが、思ったよりも登場が古かったり、航空機の後追いだったりするものも少なくありません。現代に繋がる技術開発の歴史です。
もくじ
ー マルチバルブヘッドからターボチャージャー
ー ディーゼルとジェットタービン
ー ロータリーと無鉛ガソリン そして燃料電池車へ
マルチバルブヘッドからターボチャージャー
1980年代には4バルブヘッドが有力なマーケティングツールであり、2代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTIのリアには誇らしげに「16v」のバッジが輝いていた。しかし、AUTOCARがロードテストを開始した1928年の時点で、すでにマルチバルブヘッドというのはありふれた存在だったのだ。1916年には米国製スポーツカーのスタッツ・ベアキャットがマルチバルブヘッドを採用しており、ベントレーとブガッティも4バルブヘッドモデルをラインナップしていた。
フューエルインジェクションも1980年代に一世を風靡したが、当時すでに登場から数十年を経過した技術であり、他の先進技術同様、フューエルインジェクションも極端な高度変化に対応するため、自動車よりもはるかに複雑な空燃比制御が必要とされた航空が始まりだった。初めてガソリン向けフューエルインジェクションが登場したのは、1902年のレオン・ルヴァッソール設計による初のV8エンジンに採用されたものだったが、ムッシュ・ルヴァッソールの名を知るものはあまり多くはない。
1560台目のロードテスト車両となったメルセデス・ベンツ 350SLはしばしば最初にフューエルインジェクションを導入したロードカーとして紹介されるが、実際には、1952年に登場した2ストロークエンジンを積むゴリアテ GP700が、350SLよりも3年早くボッシュ開発のフューエルインジェクションを搭載していた。
しかし、1980年代にもっともロードテスターたちの胸を躍らせたのは強制吸気システム、つまりターボチャージャー技術だった。一方で、エンジンから動力を得るスーパーチャージャーは1880年代の内燃機関登場にまで遡ることができる。1928年当時のロードテスターたちが初めて体験したスーパーチャージャー搭載モデルは、その強烈な6.3ℓ直列6気筒から162psを発揮するメルセデス・ベンツのモデルKだった。
現在ではターボチャージャーはありふれた存在となっているが、その普及には時間を要している。1930年代、航空機用エンジンで初めてターボが採用されたことで、ここでも航空業界が先行していた。ターボチャージャー技術の開発は第2次世界大戦中も継続され、1962年に量産初のターボモデルとしてオールズモビル・カトラス・ジェットファイアが登場したが、欧州では1973年のBMW 2002ターボまで、その誕生を待つ必要があった。