試乗 新型トヨタ・スープラ・プロトタイプ(A90) BMW Z4兄弟車、日本で評価
公開 : 2018.12.08 00:01 更新 : 2021.01.28 18:01
「三河食堂」の腕前
ちなみにレーシング・カートの数値は1.14で、この数値が小さいほど回頭性がよくなる。ただし、ワイド・トレッドにすると、直進安定性が低下してしまう。そのためにアクティブ・ディファレンシャルを装備する。重心高については、水平対向エンジンの86よりも低くすることにこだわった。そのためにあらゆることをやったという。
前後重量配分はハンドリングの理想とされる50:50を実現しているが、実のところ、直6はフロントがほんのちょっぴり重い。ボディ剛性は86の2倍以上も高く、フルカーボンのレクサスLFAを上回るという。
提携先をBMWに求め、正式契約を結んだ時点で、このプロジェクトの成功は約束されていたのかもしれない。三河の大衆食堂がバイエルンの高級レストランと一緒に料理の大事なところをつくり、それに自前の八丁味噌をのせるようなものなのだから。
もちろん、実際はそう簡単なことではなかっただろう。バイエルンの高級レストランは、スポーツ・セダンづくりには天才的な腕前を発揮するのに、なぜかスポーツカーとなると、あまりうまくできたためしがない。むしろトヨタのほうが上手なのではあるまいか。その代表例は、開発にロータスの手を借りたといわれるMR2である。
多田CEは、おそらくそのことに気づいていた。だからこそ、Z4のホイールベースとトレッドを大きく変更するなんて大胆な提言をした。そうしてポルシェ・ケイマン以上の運動性能を持つスポーツカーづくりに情熱を傾けたのだ。
読者諸兄にこれが参考になるかどうかは別にして、フォレストレースウェイは中速の、半円を描くようなコーナー、いわゆるパラボリカが3カ所もあるテクニカル・コースで、筆者程度の腕前だと、とにかくむずかしい。