AUTOCARロードテスト90周年(5) インテリア、どう変わった? 混沌の歴史
公開 : 2018.12.16 11:40 更新 : 2018.12.16 16:51
新素材登場 安全性が重要に
裏を布張りしたビニル素材に光沢をつけたRexineと呼ばれる人工皮革の登場によって、普及モデルに本物のレザーが使用されることはほとんどなくなった。1950年代に登場したこの現代的な素材は、その未来的な質感を評価した米国メーカーによって熱狂的に歓迎され、複雑なパネル形状も縫製ではなく溶着によって造り出すことを可能にするとともに、金属のような色調を与えることもできた。
しかし、いまに至るまでビニル素材やその他の樹脂素材が目指しているのは、やはりレザーの質感であり、時には素晴らしく精巧な仕上がりを見せるものもあるが、ほとんどのものはそうではない。一方で、ファブリック素材の使用が絶えることはなく、1970年代には非常に多くのカラーが用意されるとともに、1980年代からは豪華な人工スエード素材のアルカンターラも登場している。
さらに、ドライバーとパッセンジャーとの間隔も時代とともに広くなっていった。タイヤがボディ外側に配置され、フロントマスクを堂々と飾るラジエーターに向かって絞り込まれていた戦前モデルのキャビンは横方向に狭かったが、戦後に「フルワイド」ルックが登場すると、ドアがタイヤよりも外側へと押し出され、1950年代と60年代の米国モデルの特徴だったフロントベンチシートを収めるだけのスペースを確保することに成功している。ベンチシートモデルではシフトレバーをステアリングコラムに設置することで、いざという時には3人がフロントに座ることを可能にしており、フォード・コンサルやゼファー、ゾディアックといった車種が代表的なモデルだ。
ワイドボディに続いたのは、ほっそりとしたルーフピラーと低いスカットル、そして拡大したウインドウがもたらす劇的な視界の改善だった。1960年代と70年代を通じて、ピラーは極端に細くなったが(BMW2002のキャビンからは全景が見渡せる)、構造部材であるという考えと、厳しさを増す安全規制によって、ピラーは再び極端に太く頑丈になっていった。現在では、高いウエストラインと、小さなリアウインドウというトレンドのせいで、キャビンの雰囲気はまるで1930年代に回帰したかのような、息苦しさを感じさせるものになっている。