ロードテスト　スズキ・ジムニー　★★★★★★★☆☆☆

公開 : 2019.01.01 11:10

▶ はじめに　▶ 意匠と技術　▶ 内装　▶ マルチメディア　▶ 乗り味　▶ 購入と維持　▶ スペック　▶ 結論

走り　★★★★★★☆☆☆☆

ジムニーのオーナーにとっては、乾いたターマックでの直線性能などあまり興味はない。農道で重い荷物を運べるか、岩で覆われた斜面をうまく登れるかの方が重要なのだ。しかし、日常的なクルマの使用に支障ない程度には良くないといけない。少なくとも短期間の旅行では問題ない程度には。そこでパフォーマンスを調べてみた。

13.1kg-mという最大トルクは、本物のオフローダーとしてはちょっと頼りないし、4000rpm回さないといけないというのも使いにくい。スムースにまったりと運転するには相応の腕が必要だが、いったんクルマに慣れてしまえば街を走り回るのもそんなに厄介なことではない。5速マニュアルギアボックスのシフトフィールは褒められたものではないが。

ジムニーの0-97km/hタイムは往復平均で11.9秒だった。立派な数字である。48km/hから113km/hまで（高速道路に乗るようなとき）は11.6秒。これは今年初めにロードテストを行ったエントリーレベルのガソリン車ダチア・ダスターより1秒速い。たしかに、エンジンの力強さはちょっと足りないし、高速道路では回転数は高くなる（低いギア比の結果として）が、その他のときは、ジムニーは多少なりともパワーに余裕があるといっても良い。

以前のジムニーの1.3ℓ4気筒はお世辞にも洗練されているとはいいがたかったが、それは最新モデルの新型1.5ℓエンジンでもあまり変わっていないようだ。113km/hの定速走行ではキャビンのノイズは70dBでほぼ安定していたが、3速でスロットルを全開にすると75dBに上昇する。

確かに、古いディーゼルエンジン搭載のランド・ローバー・ディフェンダーよりましではあるが（それぞれ73dBと78dB）、このコンセプトの似たライバルはもう生産中止になっているので、ジムニーを日常的な長距離ツアラーとして使おうと考えても、やはり躊躇してしまうだろう。

車重がふつうであることを考えると（実測1112kg）、ジムニーのブレーキ能力の不足はちょっとした驚きだった。113km/hからの停止には73.1mを要した。ハイブリッドのオフロードタイヤを履いたオフローダーでもめったに見かけない類の数字である。テスト当日、路面がぬれていたことを考慮に入れたとしても。

ハードなブレーキングをするとクルマは異常なほど激しくピッチングし、ブリヂストン製タイヤは路面をすべるようだった。一方、高速道路を巡行するような速度ではエンジンをかなり回す必要があるので、現代の軽量なクルマとしては燃費もそれほど良いわけではない。

113km/hの定速走行時にジムニーのトリップコンピューターがはじき出した数字は12.5km/ℓだった。しかしどちらの数字も、最悪の場合泥だらけの場所でも使えるよう設計されたライバルたちに敵いそうにもない。購入を考えているユーザーとしては、もう少し頑張ってほしいところだ。

テストコース

オフロード向きのシャシーとボクシーなデザインのボディをテストするのに最適な場所はミルブルックのヒル・ルートだ。

進行方向が頻繁にかわるため、ボディコントロールが例外的にルーズなことがわかる。一方、ステアリングレシオはスローなので、思ったように向きを変えるにはかなり忙しいハンドル操作が要求される。濡れた路面ではフロントのグリップが十分でないことも露呈するが、ステアリングホイールからは少なくとも路面のフィールは伝わってくる。