ロードテスト　キア・スティンガー　★★★★★★★☆☆☆

公開 : 2019.01.04 10:10　　更新 : 2021.03.05 21:36

▶ 意匠と技術　▶ 内装　▶ 走り　▶ 使い勝手　▶ 乗り味　▶ 購入と維持　▶ スペック　▶ 結論

走り　★★★★★★★☆☆☆

残念ながらGTラインSの直線加速に関しては、メーカーが主張するほどの俊足を体現できなかった。キアが主張する0-96km/h加速時間は5.8秒となっているが、気温が低く湿った路面状況だった中で、われわれが計測したベストは7.39秒だった。スティンガーは発進時に充分なトラクションを得られていない様子もなかったから、コンディションは大きく影響していないはずだ。

むしろ、スティンガーはブレーキを放しアクセルペダルを深く踏み込んでからの一瞬、重たく大きなボディにトランスミッションがやや戸惑っているような素振りが見られた。ちなみに、2015年に計測したジャガーXEのガソリンモデルでは、パワーで47psと3.3kg-mも劣るにも関わらず、0-96km/hでは7.6秒と僅差。

走行状態からの中間加速でも、軽量とはいえ、よりパワーで劣るジャガーXEに対して、さほどアドバンテージは得られていない。48km/hから112km/hの加速では、XEが6.9秒だったのに対し、スティンガーは6.4秒だった。

2.0ℓエンジンを搭載するスティンガーにとって、ライバルよりもカタログスペックで最高出力や最大トルクが上回っているという点は、かなり強力なアピールポイントになると思う。しかし、実際の走りではそのアドバンテージが得られていないという事実は、残念に思う。

しかし、エンジンの回転数が2500rpm以上に達するとレスポンスも増し、路上での追い越しなどでもストレスを感じることのないパフォーマンスを披露する。キックダウンするまでアクセルペダルを踏んでも、ATが実際に変速するまで、少し間が空いてしまうことは気に留めておく必要はあるけれど。

ATのシフトアップに関しては、比較的スムーズ。ステアリングホイールに付いたシフトパドルを使用して、任意の変速も可能となってはいるが、マニュアルモードの固定はできない。しばらくパドルでの操作をしないと、トランスミッションはすぐにATモードに戻ってしまう。

ターボ加給される4気筒エンジンのサウンドは、特に素晴らしいというところはない。音色は中々逞しいものの、エンジン音を社内に響かせるアクティブ・サウンドシステムによって、誇張されているからこそ。巡航走行時は充分に静かで洗練された味わいがあり、もの足りない音響面を充分補っている。

テストコース：乾燥

スティンガーをサーキットで走らせた時のドライビングは、賞賛に値するほどの内容だった。パワー感やボディの俊敏性、コントロール性の高さやニュートラルなバランスなど、高次元でまとまっている。反面、本気でサーキットを攻め込もうとすると、ATとスタビリティコントロールの設定が、その気持ちをそいでしまう。

オートマティックは、たとえマニュアルモードにしていたとしても、アクセルを深く踏み込むとキックダウンしたがる傾向がある。このアクセルペダルを一定量踏み込むと、キックダウンされる設定自体は、マニュアルモードであってもオフにすることができない。加えて、キックダウンしない踏み込み量を探りながら運転していても、ECUは自動的に一段下のギアを選ぼうとする傾向がある。

スタビリティコントロールは、一応オフにするスイッチは付いているものの、実際は完全にオフにはならない。ドライビングモードをスポーツ＋にしても、システムは比較的頻繁に、しかも急激に介入してきてしまう。