ロードテスト キア・スティンガー ★★★★★★★☆☆☆

公開 : 2019.01.04 10:10  更新 : 2021.03.05 21:36

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 走り ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

乗り味 ★★★★★★★★☆☆

トップグレードとなる、V6エンジンを搭載し370psを誇るスティンガーGTは、4万535ポンド(587万円)という価格を踏まえるとかなりお得感のあるモデルだと思う。しかし下のグレードの場合、他にはない存在感を持つデザインコンシャスなサルーンとして、その価値は感じられるだろうか。

最高出力247psのGTラインSの場合、同価格帯で並んでくるのは、アウディA5スポーツバックの前輪駆動モデルで、最高出力は189psとだいぶ低い。またフォルクスワーゲンアルテオンも選択できるが、エンジンは基本的にアウディと同じもの。BMWなら420i Mスポーツが選べるものの、最高出力もトルクも、さらに下回ることになる。

つまり、後輪駆動の素直なハンドリングに、ライバルより秀でたパワー、特徴的なスタイリグなど、このクラスでの注目度も充分に高いものだといえる。もし興味を持ったドライバーが、いくつかの不満を感じたとしても、総合力で見ればトレードオフできると感じるだろう。

そして、力強いトラクションと一貫性のあるステアリング、コーナリングでのニュートラルなマナーなど、後輪駆動のサルーンに期待するであろう、夢中にさせるトライビング性能が、このクルマには備わっている。特にどれかが秀でているというわけではない、しかし他にはない純粋さと素性の良さを獲得していることは明らか。たとえ中グレードの2.0ℓモデルであっても、そのスポーティな味わいはしっかりと感じることができる。

V6エンジンのGTとは異なり、GTラインSにはアダプティブダンパーが備わらないぶん、運転自体もシンプル。引き締まったボディコントロールは適正な設定で、横方向のグリップ力も高く、鮮明なハンドリングレスポンスに加えて、英国の道であっても滑らかな乗り心地を提供してくれる。

確かに、直線加速やクルマの軽くないウエイトを隠すことはできない。高速域になってくると、垂直方向のボディーコントロール性で僅かながら落ち着きが足りないように感じられるし、コーナーを攻めていくと、ライバルモデルほど、ボディをフラットに保持することも難しいようだ。

キアは、より硬いバネを選択することで、シャシーのドライバーへのアピールをよりわかりやすくすることもできただろう。しかしその近道は選ばなかった。グリップの限界領域に近づいていくと、ステアリングホイールへはより明確なフィードバックが伝わってくるし、重さも適正。反面、コミュニケーションの面ではやや希薄で、セルフセンタリングも、思ったほど良いとは感じられない。250ps近くの最高出力を備えた後輪駆動モデルでありながら、スタビリティコントロールを完全にオフできないことも、大きな疑問だ。

それでも、スティンガーは夢中にさせる魅惑的なドライビングを体験させてくれる。かなり踏み込んだ領域までシャシーは受け止めてくれるし、快適で充分煮詰められた仕上がりを持っている。いわゆるグランドツアラーとして、呼ぶに相応しい完成度を得ている。

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 走り ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

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