スーパーサルーン対決 パナメーラvsラピード 感性で選ぶなら 回顧録
公開 : 2019.01.03 07:40
ラピードの高い運動性能
実際、ラピードの走りには、アストンのシャシー部門が天啓を得たのではないかと思わせるものがある。おおむね満足できるなどというレベルではなく、もはやこれ以上、体感できるような改良は不可能ではないかと感じさせるほどにシャシーの完成度は高い。
乗り心地はパナメーラよりも硬いがハーシュネスはきれいに角が丸められており、今まで見たことがないほど優雅に100mドリフトを決めてみせたりもできる。アストンは長いホイールベースがもたらす利点を存分に活用し、この種のクルマとしては驚くほどバランスよくボディコントロールと乗り心地を両立させてきた。
さらに重要かつポルシェにとってはおもしろくないのは、この卓越した運動性能をもたらしているのが、車重からすると信じ難いほどコミュニケーションに富んだステアリングだという事実である。実際にはパナメーラより20kg軽いだけなのに、ある程度の距離の過酷なカントリーロードをハードに走らせたら、ラピードのほうが500kgは軽いと感じられることだろう。
こうなると、パナメーラの数値的な優位はもはや十分とは言えない。もちろんストレートではパナメーラのほうが速いし、ブレーキも(少なくとも今回の試乗車が装備していたセラミックローターでは)強力で、グリップも圧倒的に優れているのだが、ラピードで快適な走りを満喫したあとにパナメーラに乗り換えると、まるでオーブン調理用の耐熱ミトンを手にはめて運転しているような気分になってしまう。