ロードテスト メルセデス-AMG CLS53 ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2019.01.03 17:10
走り ★★★★★★★★☆☆
AMGの「63」とナンバリングされたクルマより2気筒少ないものの、CLS53の発するノイズは、アッファルターバッハ製のエンジンに期待するような、迫力に溢れたものだと思う。やや人工的な印象は拭えないが。V8エンジンの大地を揺るがすような轟音とは異なり、53の直列6気筒の音色も個性豊かで、シルキーといえるほど滑らかに回り、低回転域から聴かせる音を奏でてくれる。そこからアクセルを踏み込むほどに活気が増していき、6500rpmのレッドゾーンに迫る頃には強烈な唸りへと、ドラマティックに変化していく。
車内の静寂性を測ってみると、4速でレッドゾーンまで回したときの音量は78dBで、2018年の6月に計測したV8エンジンを搭載したGLC 63Sよりも2dBほど静か。相対的には25%程の差がある。
停止状態からのスタートダッシュでは、トラクション不足や9速ATの詰めの甘さといったものは皆無。0-96km/hの加速時間は往復平均で4.3秒となった。メルセデス-AMGは0-100km/h加速時間を4.5秒と主張しているが、それを上回る数字だといえる。加速マナーは極めてリニアで、回転数に関係なくターボラグもほとんど感じ取れなかった。
最もアグレッシブなスポーツ+モードにすると、その速さを実感するに充分な、鋭いシフトアップを披露してくれる。V8エンジンでなくても、強烈な直線加速は健在だ。追い越し加速でもクルマのポテンシャルは明確で、48km/hから112km/h加速に要した時間はわずか3.7秒。2011年に計測した先代のCLS 63Sには、556psを発生する5.5ℓのV8エンジンが搭載されていたが、同加速は0.1秒だけ速いものだった。
4速固定で見た場合、63Sは48km/hから112km/hの加速で5.6秒だったのに対し、53は6.1秒と、フレキシブルさで見るとV8エンジンの先代の方が優れていたといえる。AMG製のV8モデルと比較した際、わずかに劣る結果だとはいえるが、実際のコンディションでは6気筒の実力を発揮させれば、ほぼ同等のパフォーマンスを備えているといえるだろう。
もちろん、ガソリンをがぶ飲みするV8エンジンがボンネットに収まっていない分、CLS53の燃費は大幅に向上している。われわれが計測したツーリング時の燃費は、63Sが9.1km/ℓに留まったのに対し、53は13.8km/ℓと、現代的な数字を示している。
テストコース:乾燥
CLS53のサスペンションは比較的ソフトな設定で、ミルブック自動車試験場の丘陵ルートで安定性を保つには少し苦労したようだ。軽くない車重が高速でのコーナリング時の足を引っ張り、中速コーナーでのコントロール性にも悪影響を及ぼしている。丘の頂上付近ではわずかにクルマが路面から離れるような振る舞いも見せたが、危険性を感じる挙動とまではいえないだろう。
メルセデス・ベンツはスタビリティコントロールのキャリブレーション、味付けのコツを理解しているようで、CLS53にもそれはしっかり受け継がれている。しかし、ミルブックの丘陵ルートのコーナーは変化に富んでおり、急激に勾配角が変化する場面が少なくない。そのような場面では、洗練生を欠いたように、システムが対応しきれない様子も見られた。
T1セクションの積極的な方向転換を必要とする区間では、サスペンションの柔らかいセッテイングが強調されてしまうようだった。充分コントロール下にはあるのだが、大きくボディロールしてしまった。T2のセクションでは優れたグリップ力をフロントタイヤが備えてはいるものの、アンダーステアが発生。中速コーナーでも車重の重さは隠しきれなかった。T5セクションにある激しく起伏が変化する区間では、ESCは反応を示すこともなく安定して走り抜けた。ハイブリッドシステムがエンジンをしっかり補完し、丘の下り坂ではエンジンは走行パフォーマンスを犠牲にすることなく、充電も賄えている。
発進加速
メルセデス-AMG CLS53 4マティック+
テスト条件:湿潤/気温20℃
0-402m発進加速:12.9秒(到達速度:176.8km/h)
0-1000m発進加速:23.4秒(到達速度:228.2km/h)
48km/h-112km/h加速/4速:6.1秒
レクサス LC500スポーツ+(2017年)
テスト条件:湿潤/気温14℃
0-402m発進加速:13.6秒(到達速度:177.6km/h)
0-1000m発進加速:24.0秒(到達速度:230.6km/h)
48km/h-112km/h加速/4速:7.3秒
制動距離
メルセデス-AMG CLS53 4マティック+
テスト条件:湿潤/気温20℃
97-0km/h制動時間:2.73秒
レクサス LC500スポーツ+(2017年)
テスト条件:湿潤/気温14℃