987型ポルシェ・ケイマンS 前期と後期を比較 英国編集部員が中古購入
公開 : 2019.01.14 10:40
油圧パワステの濃密な感触
ほとんど同じクルマで連なって走っていると、自身の運転を外から眺めているような気持ちになり、嬉しくなる。ウェーバーのケイマンは、ボクストンの狭い路地をスルスルと進み、ひと回り小さく感じられる。コーナーを走って来る対向車も、苦もなくすれ違っていくように思える。
後ろから見るケイマンは、コーナーで驚くほどボディロールをすることがわかる。最新の718ケイマンは、よりボディがフラットに保たれ、より高い旋回Gにも耐えられるはず。反面、この型落ちの987には搭載されている、油圧パワーステアリングが生む濃密なフィードバックを、718では楽しめないことも知っている。わたしの意見がやや偏っているということも認める。わたしの考えでは、比較的低価格のクルマで、ステアリングへ伝わるフロントタイヤの感触という点では、ロータス・エリーゼに勝るものはない。
キャット・アンド・フィドル峠も、素晴らしいワインディングだが、スピード取締りの黄色いカメラによるガードはかなり厳しい。しかも、この峠の名前にもなったホテル、キャット・アンド・フィドル・インは廃業してしまっている。ペナイン山脈を超える主要ルートだったはずだが、現在は経営を維持できるほどの交通量はなくなってしまったのだろう。
ケイマンは濡れた路面でも、走り慣れた道のように安心感を持たせてくれる。タイヤのグリップ力で優れているわけではないが、グリップが限界に近づいていることがわかりやすく、スリップしはじめの挙動も充分に予想が付き、怯える必要がない。
峠道を下りきり、マックルズフィールドの街に着く。ウェーバーが笑顔でシルバーのケイマンSから降りてくる。2台のポルシェからは、ブレーキが熱く焼けた匂いが漂う中、お互いにインプレッションを記したメモを少し見比べた。