試乗 フェラーリ・ポルトフィーノ 600ps クイック過ぎるグランドツアラー
公開 : 2019.01.25 10:10 更新 : 2021.09.26 17:00
日常使いにはクイック過ぎる
一方で、本来ポルトフィーノが備えているべき、グランドツアラーとしての性格として考えると、疑問が残る。日常的に乗れる利便性の高いフェラーリ、という側面に合致しているとはいい難い。ステアリングは中心から2度ほど回すだけで敏感に反応するから、高速道路のような滑らかな路面を走行していても、幅の広いクルマを車線の中に留めておくために、常に細かなステアリング修正が求められてしまう。
リアタイヤも、フロントの落ち着きの無さを中和してくれるという感覚はなく、ステアリング操作に応じて向きを常に変えたがる。ステアリングのレシオをややスローにすれば、少しは改善するかもしれない。だが、リトラクタブル・ハードトップの重量がかさむメカニズムが、神経質な揺れを生んでしまうことで、リアタイヤの接地感の一貫性には乏しい。これはスタッドレスタイヤを履いていなくても、変わらないだろう。
ポルトフィーノのコーナリングバランスはもちろん秀逸で、フェラーリ製の最新のeデフがエンジンのパワーをしっかりと路面へと伝えてくれる。極めてアグレッシブなドライビングも可能ではあるのだが、このクルマの場合、より穏やかな走りも提供するべきだと思う。
ドライブモードを荒れた路面用の「バンピー」モードに変更すれば、サスペンションは柔らかくなり、パワートレインやステアリングの重さも穏やかになり、スタビリティコントロールの設定も変化する。それでも、この魔法のボタンを押しても、ポルトフィーノを快適なグランドツアラーとして最適な状態には変えてくれない。488ピスタで一般道を走るのと、大差ないとさえ思えてしまう。