ランドローバー・エクスペリエンス・センター 英国6拠点を巡礼 オフロード性能を体感
公開 : 2019.01.20 10:10
LREイーストナー
レンジローバー・スポーツ SDV6 HSE
最後に訪れたのは、1961年以来、ランドローバーのエンジニアたちがテストを行ってきたヘレフォードシャーにあるイーストナー・キャッスルの21km2もの敷地に設置されたLREイーストナーだった。
インストラクターのハワード・ホワイトは、手入れの行き届いた丘の上に広がるコースを紹介すると、早速われわれを荒野のなかへと誘った。
レンジローバー・スポーツ SDV6 HSEにはエアサスペンションとテレイン・レスポンスが装備されていたが、さらに、ローレンジとTR2、ATPCとリアe-ディフェレンシャルといった機能を備えたオン/オフロードパックまで装着されていた。
動力性能を向上させたスポーツのオフロードにおける実力は、レンジローバーには及ばないものの、それでも湧水地に広がるぬかるみにもこのクルマは怯むことなく、ウォーターコースの渡河エリアも多少の注意を要するだけで無事に通過することができた。
インストラクターのホワイトは、じっくりとわたしの実力を見定めたうえで、ローム層に形づくられた、このクルマと同じくらいの幅しかない29度もの傾斜角をもつ100mほどのキャッスルビューヒルへ挑戦させることにしたようだ。
ホワイトによれば、ウェットコンディションはいうまでもなく、ドライでもHDC無しでは滑落するほどの急坂だという。なんとかこの坂をよじ登ってきたカメラマンも同じ意見だった。
HDCをクロールにセットし、ローレンジで坂の頂上まで達すると、まったく地面は見えなかった。ステアリングだけを操作すれば良かったが、ブレーキが慌ただしくコントロールされ、タイヤの軋む音が聞こえてくるので、決して油断などできなかった。
この時、レンジローバー・スポーツは全力でその性能を発揮していたのだ。ゆっくりと、しかし確実に坂を下ると、ギアをセカンドへと上げ、エンジンブレーキの効きを弱めてゴールへと向かうことができた。
だが、無線でカメラマンから再度この坂にチャレンジして欲しいと言われたので、ホワイトに上りも問題無いかと尋ねると、「もちろん」と彼は応え、「バックでチャレンジするかい?」と訊いてきたのだ。
思わず笑ってしまったが、彼は本気だった。連結バスを電話ボックスへとバックさせるほうがましだと思ったが、すでにこの無謀な挑戦は開始されていた。
クルマを所定の位置に付け、リアカメラを凝視し(ドアミラーに写るのはシダ類の葉っぱだけだった)、慎重にアクセルを踏み込むと、レンジローバー・スポーツはバックし始め、何度も微妙にステアリングを調整しつつ、そのままアクセルを踏み込んで後退を続けたが、半分ほど登ったところで急にエンジンパワーが弱まり、ふたたびブレーキを踏まざるを得なくなった。なんとかシートベルトで身体を支えたまま、失敗を覚悟したものの、レンジローバー・スポーツはふたたびディーゼルの力強いトルクで息を吹き返した。
カメラマンは無事に撮影を完了し、頂上まで登りきることができたが、これは強く印象に残る出来事だった。