回顧録 フェラーリ3台比較試乗 進化の足跡と最新モデルの実力 前編
公開 : 2019.01.22 10:40 更新 : 2019.01.24 11:39
目的に純粋なF40
まず始めに、われわれがなぜ今回、この3台を並べてみたのかについてだが、理由はいくつかある。第一に、可能ならぜひともやってみたかったという単純な好奇心だ。
第二に、458は2010年に登場したクルマのなかでもっとも注目に値する一台であり、それどころかもしかするとここ10年間のスパンで見ても突出した存在であるかもしれず、したがってその意義について歴史に名を残す先輩たちとじっくり比較して考察してみる価値があると考えたからだ。
そして第三に、フェラーリを代表するモデルが過去23年間にわたってどのような点においてどのような形で進歩してきたかを一目のもとに比較することにより、将来のフェラーリがどのような方向へ進化していくのかを予測してみたかった。
正直にいうと、わたしの最高にお気に入りのクルマであるF40をなんとしてもふたたびドライブしてみたかったからという理由も実はあるのだが、それはあくまでも4番目のオマケだ。というわけで最初にわたしが向かったのは、必要最低限の装備しかない1987年式のF40の、今となっては拍子抜けするほど質素なキャビンであった。
ここに集合するまでのあいだ、ほんの30分ほど前まで458に乗っていただけに、ラグジュアリーのかけらも存在しないこのインテリアには漠然とした滑稽さすら感じてしまう。中にあるのは6点式ハーネスが装備された深くえぐられてタイトなバケットシートとステアリングホイールとシフトレバーだけで、ほかにはどんなスポーツカーにも必ずある最低限の計器とスイッチくらいのものである。