回顧録 フェラーリ3台比較試乗 進化の足跡と最新モデルの実力 後編
公開 : 2019.01.22 17:10 更新 : 2019.01.24 11:39
3台中いちばん存在感があるのはやはりエンツォです。しかし見た目にも大柄なエンツォは実際の走りでも458ほどのアジリティは感じられません。一方ツインターボのトルクと圧倒的に軽いF40の加速力は、パワーに勝る458でさえはるかに凌ぎます。
もくじ
ー 慣性を感じさせない走り
ー はるかに現代的なエンツォ
ー 挙動には不自然さも
ー スリルではF40に及ばない
ー 最新こそ最高
慣性を感じさせない走り
458は間違いなく、2010年にわれわれが試乗したクルマのなかで最速の一台である。夏に行ったロードテストでは、0-97km/h加速で3.3秒、そして0-161km/h加速で6.9秒という堂々たる記録を残している。それでも水平な直線路での純然たる加速力については、F40の域に近づくことすら不可能なのだ。
ひとたび4500rpmから7000rpmのあいだにあるパワーバンドの震源をとらえたら、F40の加速は体感的にも絶対的にも完全に458とは別次元に突入する。それは紛れもない事実だ。シフトがはるかに素早く、レシオがはるかにクロスしているギアボックスによって、458は辛うじてこの大先輩についていけているというのが事実なのだ。
F40を本気で走らせれば、その経験からはクルマについても自分自身についてもさまざまな知識が得られる。なかでも特に重要なのは、F40が造られてから23年が過ぎた現在でも、重量もしくは軽量化はクルマの運動性能を決定的に左右する最重要要素であるという真理だ。
目の玉が押し潰されそうなほど激烈に加速し、ステアリングを切った瞬間に鮮やかに進路を変え、ブレーキペダルをグイと踏み込めばピタリと止まる。コーナーの進入で慣性というものを一切感じさせないF40の動きを体験すれば、その真理を解説する言葉など不要だろう。