回顧録 フェラーリ3台比較試乗 進化の足跡と最新モデルの実力 後編
公開 : 2019.01.22 17:10 更新 : 2019.01.24 11:39
はるかに現代的なエンツォ
そういう性能で言えば、F40は現代の同格のスポーツカーを今でも上回っている。その事実からは大いに学ぶべきなのは前述のとおりだ。その一方で、南仏までドライブに行って戻ってくるのにどのクルマを選ぶかについてもまた、F40の加速能力と同じくらいに議論の余地はない。
ティーセット一式が乗るほど巨大なリアスポイラーや、300万円もする透明なプラスティック製エンジンカバーが付いたクルマではないのは明白である。
F40からエンツォに乗り換えると、製造年度が何世紀も違うわけではないのに、まるでスーパーカー博物館で別の展示室に移動したかのような感慨を覚えてしまう。いつのまにかステアリングホイールにはトラクションコントロールやライト類などのスイッチが取りつけられるようになって、センターコンソールのデザインも、F40に比べればさながら宇宙船のそれである。
スターターボタンを押した瞬間、このエンツォは凄まじい爆音とともに目を覚ます。それというのもオーナーが標準のエグゾーストと触媒を取り外し、素通しのtubi製に交換してしまっているからだ。これで50kgの軽量化が達成されていると同時に、6.0ℓV12のサウンドは常識外れの強烈なノイズへと変貌している。