試乗 フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR 7代目GTI最後の特別仕様
公開 : 2019.01.23 19:20 更新 : 2019.01.23 19:32
一般道では硬すぎる脚まわり
クルマとしてはバランスに優れた鋭い回頭性というよりも、正確性が高く、手のひらを返されないような安定志向に振ったハンドリングに仕上げてある。しかし、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤを履いていたテスト車両は特に、ホームグラウンドはサーキットだと実感はさせてくれる。動力性能は非常に高く、ペースを上げて走行してもボディはフラットに保たれ、タイヤの接地感も非常に安定している。ひたひたと最適なラインをつかみ続けて走るような感覚がある。
一般道に出てみると、高性能なゴルフに期待する輝きに反して、TCRの乗り心地は落ち着きのない振動の連続となる。大きく鋭いタイヤへの入力に対しては、明確に硬く反発するような挙動を示し、ステアリングが取られるほどの直接的な振動ではないものの、路面状況が良好であっても、運転を心から楽しませてくれるしなやかさは持ち合わせていない。
路面の起伏や剥がれを通過したとき、柔軟にいなすのではなく、衝撃に抗してしまうサスペンションの性格を知ってしまうと、どうしても良くない考えが頭によぎってしまう。標準のGTIの方が、もっと上手に一般道の路面と付き合えたのではないだろうか、と。
恐らくその答えはYESだ。もし仮にTCRの硬い脚さばきとのトレードオフで、より魅力的で夢中にさせてくれる、楽しさに溢れた活発な性格を得ているのなら、きっと別の個性として、高く評価できただろう。ルノー・メガーヌRS280やホンダ・シビック・タイプRの対抗馬として、あるいはゴルフGTIクラブスポーツSに続くモデルとして、7代目の最後を飾ることもできたと思う。