回顧録 スーパーカー対決 フェラーリ458 vs マクラーレンMP4-12C 前編

公開 : 2019.01.25 10:40

スペック上の差は小さい

この新型V8フェラーリは、先代のF430に対し2世代分は進化したと思えるほど秀逸だ。マクラーレンがこの分野に参入した暁には、今まで築いてきたマラネッロのアドバンテージが一瞬のうちに消し飛ぶのではないか、とも囁かれたが、それは杞憂だった。

さすがはこの世界に長く君臨し続けているだけのことはあると納得させる出来栄えだ。確かに、スペック表を並べればMP4-12Cの前に顔色を失うかに思える。しかし、冷静に比較すれば、その差はほとんどの場合、ほんの数%に過ぎないのもまた事実である。

2台の主要スペックを差し引きしたギャップは、最大出力で30ps、最大トルクで6.1kg-m、0-100km/h加速で0.2秒、最高速度では4.8km/h。この数字が大きいか小さいかは見る側の主観によるといっても差し支えないだろう。また、マクラーレンが強調する車両重量についても、われわれの実測ではほんの20kgの違いに過ぎなかった。

いずれも「試合を決定付ける差」とは言いかねる。そして、必ずしも「速い」と「良い」は等価ではない。この、常に肝に銘じておくべき価値基準を、今回は改めて痛感させられた。

そんなことをわざわざ書き立てて、なかなか本題に入らないと焦れている読者もいるだろう。だが、それをわざわざ書かずにいられないほど、このテストではショッキングな事実を目の当たりにしたのだ。誤解を恐れずにいえば、満を持して乗り込んだ期待のスーパーカーがただのクルマに過ぎなかったという事実を。

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