回顧録 スーパーカー対決 フェラーリ458 vs マクラーレンMP4-12C 前編
公開 : 2019.01.25 10:40
抜群の乗り心地
MP4-12Cには、他ではありえないような弱点がそこここにある。いや、それを予想しなかった自分が愚かだったのかもしれないが。ドアは叩き付けんばかりにしなければきちんと閉まらないし、エンジン音にはほとんどのケースで耳を傾ける価値はない。
シャシーとパワートレーンのモード(ちなみにノーマル/スポーツ/トラックの3段階式)を選択するスイッチはあまりにもプラスティッキーで、ブレーキ(今回の試乗車はオプションのカーボンセラミック)は低速域で適切に操作できないシロモノだ。まさか、そんなつまらない問題点が最新のマクラーレンにあるわけがないだろう、とお思いだろう。かくいう自分もそう思っていた。
もちろん、走り始めてしまえばそんな瑕疵は気にならない。ブランズハッチへ向かう濡れた道でのコーナリング撮影では、素晴らしい被写体でさえあった。さらに、走り出してすぐに気づいたことがある。乗り心地が抜群にいいのだ。
MP4-12Cのサスペンションはオーソドックスなダブルウィッシュボーン+コイルスプリング形式だが、ダンパーに工夫がある。前後左右4本のそれはオイルの経路が接続されており、電動油圧式パワーステアリングと共用するオイルポンプで油圧が制御される。
これがスタビライザーの代わりを果たし、コーナーではロールを抑制する一方、直線では圧力を落として、優れた乗り心地に寄与するのだ。それは、メルセデスの上級サルーン並みと言ってもいい。決して盛っているわけでも、あなたを担ごうというのでもない。掛け値なしの話だ。