回顧録 スーパーカー対決 フェラーリ458 vs マクラーレンMP4-12C 前編

公開 : 2019.01.25 10:40

その気にさせる458

マラネロの採った手段には、「印象付けようとわざわざ演出を施している印象」を、もっと言ってしまえば「わざとらしい印象」を受けるかもしれないが、その目的は、ドライバーをその気にさせること。

そして、それを重々承知していても、ちょっとそこまでお買い物のつもりで走り出して、気がつくと運転そのものを楽しんでいる、まったくもってすっかり思惑どおりに踊らされている自分に気づくことになる。それがフェラーリというものだ。

MP4-12Cのトランスミッションを自動変速モードにしてゆっくりと走ったならば、多少ぐずるものの、7速1000rpm以下でも走れてしまう。そして、このモードでは279g/kmという、およそスーパーカーらしからぬ低CO2排出量も達成するが、458ではこうはいかない。クルマの性能ではなく、シビれるようなエグゾーストノートを轟かせず走り続けることに、ドライバーが我慢できないからだ。

そんなとりとめもない考えを巡らせているうちに、われわれはブランズハッチにたどり着いた。その日はバイクの走行会が開催されており、路面は油まみれ。「ドルイズ」ヘアピンでは、なかなか面白い写真が撮れたものだ。だが、2台の600ps級マシーンが本質を見せたのは、このF1の舞台にもなったサーキットではない。その機会は、ウェールズの公道上で待っていた。ロードカーのテストならば、こうでなくてはいけない。

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