回顧録 1シリーズMクーペ vs ケイマンR 全く異なるキャラクター
公開 : 2019.01.26 07:10
十分な存在感
美しいプロポーションのケイマンに対して、1Mクーペのデザインは「適切な暴挙」というべきだろう。大きく張り出したホイールアーチは19インチを収めるためのもの。ボディサイドは起伏に富み、フロントフェンダーにはエアアウトレットまである。
見る者の心を引き込むに十分な存在感を持つスタイリングだ。そして、そのボディビルダー的なデザインテーマはエンジンに火を入れた後も続き、ケイマンのフラット6が奏でる控え目で穏やかなアイドリング音をあざ笑うように、4本出しのテールパイプから豊かで深いサウンドを響かせる。
インテリアは素晴らしいものとそうでもないものとの面白いミックス。美点は座り心地の良いシート、やや太めの革巻きステアリング、センターコンソールの視覚的質感を高めるスウェード調の仕上げ、そして実用に耐える後席……など。一方で「それほどでもない」と思う筆頭は、このクルマのキャラクターに対して平凡すぎるメーターである。
全体として、乗り込んだ瞬間に「おぉ、スペシャルなクルマだ」と感嘆の声をあげるような空間ではない。質感は上々だし、試乗車にナビ(オプション)が付いていたのは歓迎だとはいえ、インテリア以外にコストを費やしたクルマという印象だ。それは多かれ少なかれBMWも認めていることである。