至高の直6 新旧対決 BMW M2コンペティション vs M3 CSL 前編
公開 : 2019.02.02 10:10
シンプルで美しいCSL
BMWトレードマークのキドニーグリルが世の趨勢でねじ曲げられる以前の時代に生まれたCSLは、うって変わって上品だ。
M2コンペより低くわずかに長いボディの寸法も、高性能クーペの黄金比のお手本といって良いだろう。どこを見てもまごうかたなき「クーペ・スポルト・ライヒト(ドイツ語で高性能クーペの意)」だが、細部に煩雑な仕上げがないのもじつに好ましく映る。
トランクリッドのいわゆるダックテールはじつに巧みな造形だし、左右非対称のエアインテークもそそられる。19インチのホイールも完ぺきなデザインだ。この個体はわずか422台しかつくられなかった右ハンドル仕様だが、ボディ色のシルバーグレーも悩ましいほどに美しい。
わたしはM3 CSLのまさにこの個体に乗ったことがあるのだが、思い起こせば概して身体の収まりは特にいいわけではなかった。
たしかに、アマレッタという頑丈な人工スエードを張ったグラスファイバー製のバケットシートそのものは胸郭の下あたりをピタリと快適に支えてくれるし、太もももまあゆったりと落ちついてくれる。問題はステアリングコラムの位置が根本的に高すぎるうえ、上下調節幅も狭すぎてそれをどうにも補えないことだ。