バランスの良いハンドリング

この有り余るトルクがあれば後輪駆動のシャシーをいかようにも御することができるはずだし、そこがこの世代間バトルの見どころだ。ピッとステアリングの切れるM2と比べるとCSLはなまくらな感じだが（それでもギア比はM3標準の15:1から14.5:1に速まっている）、公道かサーキットかを問わず、そのバランスのよさはおどろくほどだ。

両車とももうちょっとステアリングに感触がほしいのが正直なところだが、トレッドの拡大された前輪をあたかも両手の支配下に置き、背中をリアのLSDに預ける感じは、低く構えたCSLのほうだけで感じとれる。衝突安全基準を満たすべくかさばるボディ構造と豊富な車内装備をまとうM2ではもはやそんな印象はうかがえないし、これからももどってはこないだろう。

CSLはシャシーが隅々まで一糸乱れずおなじ軌道を描こうとする感じがあり、柔軟性に富むこともまちがいない。もっとも、自動MTのSMGはシフトアップ時のトルク切れのあいだにテニスコート1面分くらいは走り抜けてしまうのだが。

BMW最新のデュアルクラッチ式ギアボックスを搭載したM2コンペなら、件のシフトアップもせいぜいチェス盤くらいの距離ですませてしまうだろう。だが今回の「遅いほうの」マニュアルでも（むしろ、だからこそ）、M2が逆襲に転じる切り札になるのだ。

すべての画像をみる　全21枚