至高の直6 新旧対決 BMW M2コンペティション vs M3 CSL 後編
公開 : 2019.02.02 17:10
至福のコーナリング
ペダル/ステアリング/ギアシフトといった操作系もポルシェ・ケイマンほどの正確性はないにせよ、重さや弾性感にはみごとな統一感がつたわってくるし、それゆえますますドライバーを引きこんでいくのだ。ブレーキ、シフトダウン、コーナー進入、脱出加速。どこをとっても、まるでピンとひもを張った滑車のセットを操作するかのようだ。
古いM3にしても、個々の要素はなまじのクルマが太刀打ちできないほどすぐれているのだが、その「統一性」となるとM2コンペにゆずらざるを得ない。
シャシーもこれまた遊びがいがある。超ニュートラルなCSLとくらべればバランスはリア寄りだし、重心も高い。CSLの何物もよせつけないかのような凛とした運動性と比べてしまうと、固く揺すられるM2はロールを許すまじと躍起になりすぎな気がするし、ちょっと熱すぎる感もある。
だがオーバーステアには喜々として入ろうとするし、それもESPの設定を弱くして大トルクを叩きつけようものなら、どのギアに入っていようがクルマを支配下におきながらそれこそ真横を向きそうなところにも持ち込めるのだ。こんな真似ができるクルマなどそうそうない。聞いておわかりのとおり、まさに中毒的なのだ。
あまりに中毒的なものだから、ともすればBMW Mがほどこした魔法も見過ごしてしまうかもしれない。Mの最新芸はよりさりげないところにあるのだ。
進入を欲ばらず、ステアリングとスロットルのちょうどいい組みあわせをさぐるように操れば(許容範囲はおおきいからご心配なく)、M2は足どりを微塵も乱さずに絶妙のバランスで立ち上がっていくのだ。ああ、至福の一瞬。