ロードテスト BMW 8シリーズ・クーペ ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2019.02.03 17:40  更新 : 2019.02.05 17:56

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 走り ▶ 使い勝手 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

乗り味 ★★★★★★★★☆☆

現行7シリーズに乗ったことがあれば、なぜBMWの最上級サルーンがSクラスに及ばないか理解できるはずだ。ボディコントロールはやや締め上げすぎで、スプリングレートは必要以上に高い。このクラスのとてつもなく高い水準に照らしても、乗り心地は十分良いのだが、おそらく確信犯的に、高級車として最高水準を狙うには遊びがなさすぎるのである。

ところが、8シリーズは兄弟分のサルーンとは違う信条の持ち主だ。大型GTセグメントで、よりスポーツカーよりのポジションを目指すなら、むしろ7シリーズと同じ道を行くべきだと思うだろう。たしかに840dは、長距離ドライブにおける路面からの気障りな振動をうまくいなしてほしいと望まれるクルマだが、ビッグクーペとしては乗り心地が硬い。それでも、このシャシーが問題を解消できないかといえばその正反対で、しかもこのサイズのクルマではレアな本物のスポーティさやグリップ感を味わえる。

BMWが、20インチ以上のホイールを用意しなかったのは賢明で、テスト車は一般道を飛ばしても荒れた路面を難なく消化した。もっとも、これがランフラットタイヤ装着車ならこうはいかないだろうが。ロック・トゥ・ロック2.3回転のステアリングは、長いノーズの先を無駄なくコーナーへ切り込ませるに十分なクイックさ。長いホイールベースと理想値に近い重量配分は、車体に万全の安定感をもたらす。外から見ている限り、英国の道路で走らせるパフォーマンスカーとしては大きくゴツすぎると思うだろうが、8シリーズは、これは決まり文句だが、走らせるほどにサイズが小さく感じられるようになるクルマだ。

 とはいうものの、特筆できるほど振り回せるようなマシンではない。リア寄りの重量配分にも関わらず、足取り確かなxドライブは、ライバル車に見られるようなオーバーステアに転じる瀬戸際の過敏さを払拭している。コーナーではあれこれ試すよりも、ステアリングのフィードバックとスロットルコントロールに頼り、4WSの巧みなアシストもあってほとんど揺るぎないスタビリティの恩恵を受けていればいい。これがセールスポイントになることもあるだろうが、BMWにはもっと壮大な運動性能を求めるという声もあるだろう。なぜなら、このクルマはGTクラスの比類なきドライバーズカーであると豪語してはばからないのだから。

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