回顧録 マクラーレンF1 GTR vs MP4-12C エンジニアリングの傑作

公開 : 2019.02.01 07:40

常軌を逸した動力性能

それに対してMP4-12Cの3.8ℓツインターボV8は、発生するパワーはやや少なく(600ps)トルクは全く同じである。しかしクルマ自体の重量は1400kgでギア比は322km/h超まで出せる設定になっている。というわけで、単に純然たる加速力だけが問題であれば、比較にならないどころか存在する宇宙そのものが別なのだ。

ただし当然ながら、本日はそういうわけにはいかない。何故ならこの油や泥で汚れた空港の滑走路を使ったテストトラックでは、F1 GTRは本来の実力を発揮するにはあまりにもパワフルすぎるのだ。ちょっと前に乗り込んでスターターモーターを回し、軽くスロットルをブリップしたら、V12の強烈なパワーに正直いって不安を感じた。

そして走り出し、2速ギアに入れてスロットルを4分の1も踏み込まないうちに、数秒もたたずして危うくスピンに陥る寸前まで姿勢を崩してしまった。こんな状況でこれではもう究極のNoを突き付けられたようなものである。

しかしこれがF1 GTRの本質なのだ。完全に常軌を逸した存在であり、信じられぬほど音が大きく、そして今日のような日に自身のパフォーマンスを発揮するにはあまりにも実力がありすぎるのである。

その結果、最初にこの2台のマクラーレンを本気で走らせて比較しようとサーキットに乗り出したときには(わたしがGTRに乗り、マクラーレン所属の達人にして変人のケヴィン・マクギャリティがMP4-12Cを運転した)、わたしにできることといったらただそこに座って、マクギャリティとMP4-12Cが視界から消えて行くのを眺めているだけだった。

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