回顧録 550ps級サルーン対決 CLS63AMG vs パナメーラ・ターボS
公開 : 2019.02.02 09:10
ケイマン1台分の差額
このクルマは、数値的に見れば、常識を越えた資質を備えている。550psと81.6kg-mの数字はそれを示す代表的なふたつだ。だが、それ以上に堂々たる数字がほかにある。1台2481万円というプライスである。大排気量V8ツインターボの出力は非凡ではあるが、これに比べたら唯一無二というわけではない。
英国南部のここウィルトシャー州に広がる美しい農村地帯でパナメーラを待つのは、メルセデス・ベンツの新型CLS63 AMGである。AMGパフォーマンスパッケージをオプション装備したこの個体の場合、5.5ℓエンジンの出力はほぼ同様の構成であるパナメーラの4.8ℓをわずかに上回り、トルクはまったく同一ながら発生する回転数はやや低く、そのぶん実用性が高い。
加えて車両重量は100kg以上も軽く、そして何より価格が1755万円と700万円も安い。冷静に考えればケイマン1台分以上の差があるのだ。この差額と、買ったらまず間違いなく家族からの非難の声を一身に浴びることになるという、ほかに例のない才能を持つそのシェイプのネガを跳ね返すに足る特別な何かを、果たしてパナメーラは持っているのだろうか?
まず見た目からいくと、今回のCLSは「スーパーヒーロー」になれるAMGのスタイルキットをまとっているが、そうでなくとも、魅力的スタイリングには反論の余地なしという結論が出ている。CLSのルックスの見事さを認識するにはわざわざパナメーラの隣に駐車する必要はなく、またその唖然とするような速さを知るためには公道でちょっと加速してみれば十分だ。そして、そのときのサウンドの素晴らしさにも、間違いなく共感を覚えることだろう。