試乗 メルセデス-AMG GT63 S 4ドアクーペ 新たなクラス・ベンチマーク
公開 : 2019.02.05 10:15 更新 : 2019.02.05 11:00
FRの理想ともいえるテールスライド
レースモードが選択されるとESPはスポーツモードに設定され、eデフの効きが早まりリアタイヤの自由度が増し、お好みのオーバーステア状態に持ち込めるようになる。しかもドライバーの操作が多少遅れても、セーフティネットが控えており、コントロールを失うことはない。
路面がドライ状態だと、Eクラスより長いホイールベースを備えるフロントエンジン車ということもあり、すべての姿勢安定機能をオフにすれば驚くような場面もあるだろうから、制限はやや強く感じられる。しかし、湿った滑りやすい路面なら、クルマの持つダイナミクス性能の高さを簡単に引き出すことができるはず。スポーツカーにとっては理想的ともいえる、ステアリング操作をすることなく、テールスライドでクルマの進行方向を定めていくことも可能だ。素晴らしいとしか言いようがない。
このドライビングスタイルを楽しんでいるうちは、ポルシェ・パナメーラ・ターボよりも一回り小柄にすら感じることができる。驚くことに、2ドアのAMG GTクーペと同じ低重心と後方にやや偏った荷重バランスを、4ドアクーペにも与えることに成功しているそうだ。結果、価格は5万ポンド(710万円)も安いが、E63Sと同等の速さを身に着けているとのこと。もちろん、もっとゆったりとドライブを楽しむことも可能ではある。
普通に運転している限り、ストレートでの走りは穏やかで、必要がない限りはエンジンのトルクはフロントタイヤのみに伝えられる。サスペンションをコンフォートモードにし、60km/h程度のスピードが出ていれば、リアシートの乗員を驚かせるような洗練した乗り心地を提供することさえ可能。まさにサラブレッドを自然に流しているようなフィーリングだ。