回顧録 ミニマム級シティカー対決 VWアップ vs トヨタiQ 前編

公開 : 2019.02.08 12:00  更新 : 2021.01.28 16:55

ミニマムサイズのシティカーを驚愕のエンジニアリングで実現したトヨタのiQと、同様のアプローチで真っ向から勝負を挑むフォルクスワーゲン・アップ、どちらが本当に賢い選択肢なのか、過酷な道路環境で有名なローマの裏小路で確かめます。

もくじ

VWが作ったシティカー
わずか854kgの車重
新開発のパワートレイン
専用プラットフォームの恩恵
ライバルのiQとも比較
明瞭かつ単純なデザイン

VWが作ったシティカー

(AUTOCAR JAPAN誌104号の再録)

ローマ──そこはシティカーの心の故郷である。この地でわずかでも時間を過ごす機会があれば、おびただしい数の小さなクルマたちに必ずや驚かされるはずだ。じわじわと流れていく交通渋滞や2重3重に駐車がひしめく道路脇の主役は、じつに多種多様なコンパクトカーたちである。

もはや少数派になった初代パンダやアウトビアンキY10から最新型のランチア・イプシロンにいたるまで、通りはまるでコンパクトカー史の動的展示空間といった風情だ。フォルクスワーゲンが新型シティカーのアップをローンチするのに、ここ以上に適した場所はあるまい。

新型シティカーとはもちろんアップのことだ。このクルマはいくつかのスイッチ類(ヘッドライトやウィンカー、ウインドウなどの操作)を除き、基本的にはすべてが根本からまったく新しくデザインされた。今どきの自動車業界では非常に珍しく、かなりのコストをかけられた、まさに事件ともいえるモデルである。

アップの寸法はオリジナル・ミニより全長がわずか50cm長いだけであり、全長3.54mで左右のサイドミラー間が1.9mしかない。現在の安全基準とパッケージングへの要求を考えると、感動を覚えずにはいられない小ささだ。

しかも、これでちゃんと4人の大人が乗れて、251ℓのトランクまで確保されているのだ。技術的な革新性はないが、エンジニアリングの大部分にごくごく細かいディテールにいたるまでの再検討とリファインを積み重ねたと、VWは強調している。

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