回顧録 ミニマム級シティカー対決 VWアップ vs トヨタiQ 前編

公開 : 2019.02.08 12:00  更新 : 2021.01.28 16:55

わずか854kgの車重

彼らが採ったエンジニアリング主導というアプローチの正しさは、エントリーレベルのアップの車重がわずか854kgに抑えられている事実でも証明されている。スティール製ボディシェルの重量にいたっては、たった270kgしかないのだ。

それでいて、衝突安全性については疑問の余地はない。このボディシェルの8%(フロアパンの前部とBピラー外側のシェル)は熱間成型の鋼鉄で造られているが、それによって普通のプレス加工では不可能な強度を実現しているのだ。

さらにこのボディシェルは、19800Nm/度と剛性も十分に確保されている。これはクラス最高に相当する数値だ。いうまでもなくこの剛性は、単に衝突安全性の観点から決定的に不可欠なだけでなく、乗り心地やハンドリングにもきわめて重要である。

サスペンションを取りつける構造体の剛性が高ければ高いほど、エンジニアがステアリングやスプリングやダンパーを正確にチューニングするのもそれだけ楽になるからだ。

VWによれば、これだけ相対的に軽量なボディシェルが出発点としてあればこそ、機械的なランニングギアの多くをそれに合わせてダウンサイジングできたという。その典型といえるのが、アップのために新設計された3気筒のガソリンエンジンだ。

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