回顧録 ミニマム級シティカー対決 VWアップ vs トヨタiQ 前編
公開 : 2019.02.08 12:00 更新 : 2021.01.28 16:55
明瞭かつ単純なデザイン
アップの表面には、iPadの裏面を連想させる仕上げの美しさがある。要するに、多額の予算をかけて“機械工作した”かのごとき見映えなのだ。ディテールへのこだわりは驚くほどで、接合部がまったくわからないボディ側面とルーフパネルの継ぎ目(実際にはレーザー溶接されている)の処理などはとくに見事である。
フロントフェンダーとバンパーのあいだのシャットラインは異常に細く、これに匹敵するクルマは、超高額なプレミアムクラスでもそう多くはないだろう。
渋滞のなかを走るアップは、そこにどれだけのスモールカーがひしめいていても、しっかりと目立っている。普通のスモールカーの美学とは離れたところで、じつにクレバーに、差別化を意識して造られている証左であり、小生意気でちょっと攻撃的っぽい感じを演出できているからだ。
室内を見ても、伝えるべき内容はまったく変わらない。すべてが最大限の明瞭さと単純さを目指して設計され、実装されており、そして品質は驚嘆すべき高水準を達成している。決して多額の予算を投じられているわけではないにもかかわらずである。乗員のための空間がたっぷりと確保された前席キャビンは幅が広く開放感があり、手足を伸ばせる余裕すらある。